安全報告書

2022年度 安全報告書

この安全報告書は、航空法第111条の6の規定に基づき、AIRDO(エア・ドゥ)の安全確保のための取り組みや安全の実態をまとめ、ご利用のお客様に広くご理解頂くとともに、会社のさらなる安全意識の向上および安全への取り組みのいっそうの促進を図るために公表するものです。


株式会社AIRDO

この安全報告書は、航空法第111条の6に基づき、弊社の安全への取り組みをまとめたものです。

「2022年度 安全報告書」の発行にあたって

 平素よりAIRDOをご利用いただき、誠にありがとうございます。

 「2022年度 安全報告書」を作成しましたのでぜひご一読いただき、弊社の安全に関わる取り組みについてご理解賜りますよう、
お願い申し上げます。

 2020年度から続いた新型コロナウイルスの影響も徐々に収まり、2022年度は段階的にコロナ以前の運航スケジュールに戻すことができました。また、昨年10月に株式会社ソラシドエアと共同持株会社「株式会社リージョナルプラスウイングス」を設立し、地域をつなぐエアライングループとして地域社会の発展に貢献し、さらに協業によるシナジー効果を出すための施策を着実に進めております。そのような大きな環境の変化があった中におきましても、当社は全社を挙げて各種安全対策を確実に実施したことで、創業以来の「無事故、重大インシデント0件」を継続できたことに加え、全ての安全指標において目標を達成することができました。

 しかしながら、今日までの安全が明日からの安全を保障するものではありません。安全に対しては従業員に芽生える過信や慢心を戒め、これまで培ってきた『人』を鍛え、『仕組み』を磨き上げ、高い意識と確実な行動を継続することで皆様に安全・安心を提供してまいります。

 当社では企業理念の冒頭に「安全を絶対的使命として追求します」と掲げ、安全を最優先に事業を運営しております。2023年度は旅客需要が回復することに加え、ソラシドエアとの協業体制の構築が本格化します。この様な状況の中におきましても、社員が高い安全意識の下、規程基準の遵守、各種安全対策の実践を確実に行うことを目的として、2023年度の安全方針は、3年連続で「いかなる環境下においても安全を堅持する」としました。この方針を役職員一人ひとりが片時も忘れることなく積極的かつ確実に取り組んで参る所存です。

 これからも、皆さまの変わらぬご愛顧とともに、一層のご指導ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

2023年6月
株式会社AIRDO 代表取締役社長 草野晋

1.安全に関する基本方針

1-1 企業理念・安全行動指針

 弊社は、企業理念の冒頭において「安全を絶対的使命として追求します」との決意を述べ、この理念の下、会社として航空の安全を追求しています。

企業理念

  • 安全を絶対的使命として追求します
  • お客様に感動していただける空の旅を提供します
  • コスト意識を持って企業競争力を強化します
  • 人を活かし育み、活力ある企業風土を創造します
  • 北海道の翼として地域社会の発展に貢献します

 弊社は、企業理念に掲げている「安全を絶対的使命として追求」するため、安全行動指針を定め、全役職員がこの安全行動指針に従い、業務を遂行しています。

安全行動指針

  • 曖昧な判断はせず、確信がない場合は安全を最優先に行動します
  • 情報は迅速かつ的確に報告し、組織を超えて共有します
  • 周囲の意見に耳を傾け、自分の考えを声にして、コミュニケーションを大切にします
  • 教訓から学び、自覚と責任を持ってプロフェッショナルとしての技倆を高め続けます

1-2 安全方針

 経営の最高責任者(代表取締役社長)は、安全最優先の決意を示した「安全方針」を設定しています。

2022年度安全方針

 航空会社にとって、安全は何ものにも代えがたい、会社存続の基盤であり、絶対的使命として何よりも優先させるべきものです。
当社の「企業理念」では冒頭で、

安全を絶対的使命として追求します

と謳い、安全最優先の固い決意を表しています。

 2022年度の安全方針は、以下のとおりに定めています。

安全方針

  • いかなる環境下においても安全を堅持する

重点施策

  • 変化のリスクに向けた確実な対応
  • 規程基準の遵守とレビューの実施
  • 飲酒傾向の把握と対応
  • 安全意識の向上へ向けた取り組みの強化

安全指標・安全目標値

  • 「事故・重大インシデント 0件」
  • 「アルコール検査での検知・失念 0件」
  • 「ヒューマンエラーに起因する安全上のトラブル報告件数(委託先を含む) 5.54件/1万便 以下」

2.安全確保の体制

 弊社は、航空法に基づき、「安全管理規程」において、安全管理の方針、体制、実施方法について定めています。また、安全統括管理者を選任し、経営トップから運航、整備、客室、空港業務などに直接携わる社員を含む会社全体で、航空輸送の安全に対し組織的に取り組む「安全管理システム」(以下「SMS」という。)を構築しています。

2-1 安全管理システムの概要

 弊社におけるSMSとは、会社の運航安全の方針や目標を定め、体制を整備し、実行し、その結果を評価することにより、会社組織が一体となって、継続的に安全の確保および改善をはかる仕組みをいいます。
 この仕組みにおいて、P(PLAN:計画)、D(DO:実施)、C(CHECK:問題把握)、A(ACTION:改善)のサイクル(PDCAサイクル)を継続することにより、運航の安全の維持・向上を目指します。
 弊社の「安全管理規程」では、PDCAサイクルについて、次のように定めています。
  1. 安全方針
     企業理念に基づき、会社の安全に関わる基本的な方針および目標を設定し、運航の安全についての組織および責任と権限を定めるとともに、SMSの適切性、妥当性および有効性を確保し、継続的改善を図っていくためのマネジメントレビューを設定する。
  2. 運航体制
     運航体制の維持および改善を図り、SMSの有効性を継続的に改善するために必要な資源の供給について定める。さらに運航の安全・品質に関わる業務の実施基準・手順の設定について定める。
  3. 運航の実施/運送の提供
     日常的に運航の実施・運送の提供の業務に従事する社員についての具体的な行動基準を定める。さらに運航の安全に関わる日常的な業務の外部委託に対する管理について定める。
  4. 問題把握と改善
     運航の実施・運送の提供に伴う問題点の把握、継続的な再発防止対策および未然防止対策の実施による運航の安全性向上ならびに内部安全監査による定期的なSMSの改善について定める。さらに、SMSを有効で効果的なものにするための安全推進の一般的な種々の活動について定める。

2-2 安全確保に関する組織

弊社の安全確保の組織体制は、以下に示すとおりです。

組織図と従業員数(2023年3月31日現在:944名)

安全推進室 内部監査室 CS推進室 広報・法務室 北海道室 企画部
19名 4名 5名 7名 6名 14名
財務部 総務部 IT推進部 整備本部 運航本部 運送本部
10名 28名 7名 162名 162名 486名
マーケティング本部
34名

運航に携わる各職種の人数(2023年3月31日現在)

職種 人数 備考
運航乗務員 129名
客室乗務員 259名
整備従事者 113名 うち確認主任者等(75名)
地上運航従事者 23名 うち運航管理者(19名)

※運航および整備に関わる委託先の人数は除く

2-3 責任と権限

 安全の維持・向上を目的とするSMSの継続的な改善を図り、安全を確保するための、委員会組織、役職者、社員の責任と権限は以下のとおりです。

  • 安全推進委員会

     すべての常勤役員、生産部門の本部長等により構成され、会社の安全に関わる重要事項の最高決議機関として、原則、毎月1回開催しています。安全に関する基本方針を策定し、安全重点施策の実施状況や達成状況を確認、その結果に基づき会社全体の安全対策の確認、監視、助言、勧告、指示を行います。

  • 社長(経営および運航安全に関する最高責任者)

     「安全は経営の最優先事項である」旨の「安全方針」を明示し、安全に対するコミットメントを社内に深く浸透させるとともに、安全に関する総まとめとしてマネジメントレビューを定期的に実施し、SMSの継続的な改善を図っています。

  • 安全統括管理者

     経営の立場から、SMSの継続的改善を推進し、安全の監視を行い、社長のマネジメントレビューを支援しています。

  • 安全推進室長

     輸送の安全を確保するための安全推進活動全般に関わる方針、計画を策定する責任者として、関係各部署とも連携し、安全に関わる基本方針および安全管理規程に基づく安全推進活動の総括を行います。また、マネジメントレビューの管理責任者として、安全に関わる課題の解決を目的に関係各部署への指示、提言ならびに支援を行います。

  • 生産部門の部門長

     自部門内の安全に関する責任者として、部門内の業務プロセスや手順を設定し、確実に実施・維持します。また、不安全事象の再発防止活動および未然防止活動を部門内において実施します。

  • 従業員

     安全に関する取り組みの実行責任者として、航空機運航の業務に対する安全リスク管理を行うとともに、許可を受けた航空運送事業者として求められる条件と制約および航空機の運航に適用される法令、基準を厳格に遵守します。

2-4 各組織の機能と役割の概要

各部門の機能と役割は以下に示すとおりです。

  • 安全推進室

     安全に対する経営の方針に基づき、安全に関わる問題について社内各部門および社外の関連する諸機関との調整を行い、会社のSMSの推進と継続的な改善等の具体的な指揮を行います。また、社内安全監査や実運航データに基づくモニターを担当し、必要な教育や助言等を実施します。

  • 運航本部

     会社の経営方針に基づき、運航部門に関する生産業務全般を担当し、安全運航の徹底と経済的な生産業務の遂行を行います。

  • 整備本部

     会社の経営方針に基づき、整備部門に関する生産業務全般を担当し、安全運航の徹底と経済的な生産業務の遂行を行います。

  • 運送本部

     会社の経営方針に基づき、運航管理・客室・空港部門の生産業務全般を担当するとともに、航空保安の徹底ならびに顧客ニーズの取りまとめを行います。

3.安全確保への取り組み

 安全管理の方針に則り、安全管理システムを円滑に機能させるために以下のような安全管理を実施しています。

3-1 マネジメントレビュー

 弊社では、安全管理の適切性、妥当性、有効性を確実にし、継続的改善を図っていくことを目的として安全に関する取り組みの総括を安全統括管理者から社長に報告しています。具体的には、安全目標の達成状況や安全重点施策の進捗、社員の安全意識などの幅広い情報を収集し分析評価を行った結果に基づき報告されます。その結果を基に社長は、安全方針の妥当性、安全管理およびプロセス改善の要否、取り組むべき課題の有無、必要な資源の割り当ての要否などを総合的に考慮し、必要に応じて対応の指示を行います。その指示に基づき各部門は、安全施策の策定や中・長期的な安全の取り組みに反映しています。

3-2 日常運航における問題点の把握および対応

 日常運航での安全に関わる問題点の把握および全社的なフィードバックの体制については、以下の方法により全社的な対応を図っています。

  • 安全推進委員会

     安全推進委員会は、安全に関わる重要事項の最高決議機関として、安全に関わる重要事項の決定、マネジメントレビューの定期的な実施、組織を横断した情報の共有化等、SMSの推進・改善などを図るうえで重要な役割を果たしています。会議の席上では、日常運航における問題点について生産本部(運航本部・整備本部・運送本部)の各部店から月次で報告され、再発防止策、未然防止活動実施状況の確認などについて討議され、承認されます。合わせて、安全推進委員会委員長および安全統括管理者から安全に関する勧告や改善の指示が示されます。

  • 安全部長会

     安全部長会は、各専門機能(運航・整備・客室・空港)の主管部門長により行われる会議で、全社的にリスクの高い事象の把握と対応の進捗管理や、各専門機能におけるSMSの実施状況について共有し、組織横断的なSMSの推進を図ることを目的としています。

  • 各専門機能における安全品質に関わる会議

     各部門の安全品質に関わる会議を定期的に開催し、現場の再発防止策や未然防止活動の実施状況を把握するとともに、具体的なリスク評価を行い、安全部長会へ報告します。また、現場のSMS実施状況を把握し、部門間の意思疎通を図ります。

  • Weekly Safety Report会議(WSR)

     毎週開催する会議において日常運航にて発生したイレギュラー、不安全事象等についての対応状況および改善結果等、生産現場で発生している事象をタイムリーに社長を含めた経営層に対し情報を共有し、全社的な安全意識の向上を図ることを目的としています。

  • 内部安全監査

     会社のSMSが適切かつ有効に機能しているか、環境の変化に応じて継続的に改善されているかに着目し、SMSのPDCAサイクルの"Check:見直し"の機能を遂行しているのが内部安全監査です。弊社の内部安全監査は、各組織の個別業務および特定の機能に着目して社内横断的に実施する定期監査と、変化する環境へのSMS追従を確認する臨時監査で構成されています。これらの監査業務を担当するのは、社内規程で定められた所定の訓練を修了して資格発令された内部安全監査員で、公平で客観的な監査を実施するため、各自の専門性と監査員としての力量の向上に努めています。
     2022年度は安全に関わる業務を対象に計9回の定期監査を実施し、監査側と被監査組織が「協働」してSMS改善プロセスを継続的に進めています。

  • 安全報告制度

     弊社では、運航に障害を及ぼす可能性があるあらゆる事象について、その報告手順を定め、安全報告制度として運用しています。その概要は次のとおりです。

    1. 法令上の義務報告
       航空会社は、航空法により、「事故」「重大インシデント」「安全上のトラブル」などの「安全上の支障を及ぼす事態」について報告が義務付けられています。
    2. 社内規定に基づく報告
       直接運航に携わる社員は、機長報告、客室乗務員報告、運航管理者報告、整備不具合事象報告等による報告が関係規定類により義務付けられています。
    3. 自発報告
       ヒヤリハット事象に関して情報を収集し適切な対応を図り、不安全事象の未然防止活動に役立てるため、自発報告制度を設けています。特に出されたヒヤリハットの中で規定の改定やシステム改修などに繋がったものを当社では「有形活用」と呼んでいます。
  • 飛行データ解析プログラム

     運航の安全品質を向上させることを目的として、FOQA(Flight Operational Quality Assurance)プログラムを実施しています。このプログラムは、当社が運航する全ての便の飛行記録を収集し、解析・評価することで、日常運航の中の不安全要素を特定し、是正していくものです。また、収集した飛行記録をビジュアル画面に表示したDRAP(Data Review and Analysis Program)の機能を有効に活用し、その結果を運航乗務員および組織にフィードバックし日々の安全運航の維持に役立てています。

  • 各生産本部(運航本部・整備本部・運送本部)での活動

     日常運航における問題点は、各部門において、前述の安全報告制度により組織的に把握されます。各部門では、報告された問題点に直ちに対処し、重要度に従って事例の周知、是正、再発防止策の対策を実施します。また、複数の本部にまたがる問題については、安全推進室が全社的な調整を図っています。いずれの場合も、安全に関わる重要な問題・事象は、安全推進委員会および航空局の所管部署に適時報告し当該事象の改善を図ります。

  • リスクマネジメント

     弊社では、安全対策の策定やインシデント・トラブルなどへの対応にあたり、以下のステップによるリスク管理を実施しています。

3-3 変更管理

 社内外の環境変化に伴い、組織の拡大・縮小、設備・システム、プロセス・手順の変更等により意図せずハザードが生じ、新たなリスクが発生する可能性があります。弊社では、これらの変更により生じるリスクを把握し、必要な対策を取ってリスクを許容値内におさめるため変更管理を実施しています。

 2022年度の主な変更内容は、共同持株会社「リージョナルプラスウイングス(RPW)」の 設立や株式会社ソラシドエアとの協業に伴う案件や福岡線就航、組織改編、新システムの導入等がありました。変更管理件数は前年度から54件減少しましたが、これは前年度のようなボーイング767型式の新機材導入(2機)、機材退役(2機)といった複数の部門にまたがる大きなイベントがなかったためです。

3-4 運航に携わる各職種の定期訓練および審査の内容

弊社では、日常運航に携わる職種ごとに以下のような教育や訓練などを定期的に実施し、運航の安全を確保しています。

運航乗務員

 運航乗務員は、訓練生として入社後、地上勤務をしながら会社の仕組みや各部門の仕事の流れなどを学び、訓練投入後に数多くの訓練・審査を経て副操縦士に昇格します。そこで十分な経験を積んだ後に、さらに厳しい国や弊社規程を満たすための訓練・審査を経て、機長として昇格していきます。昇格後も、機長として緊急事態を想定した訓練や運航に必要な知識、操縦能力、判断力などを定期的に確認する審査、厳しい航空身体検査が義務付けられています。
 定期訓練では、能力維持と向上を図るため、半年に1度、フライトシミュレーターを用いた訓練を行っています。その訓練には、いかなる状況下でも適切な対応ができるよう、通常は経験することのない異常な状態や緊急な状態等をシミュレートする内容も含まれています。また、1年に1度、定期学科訓練やLOFT(指定訓練)(注)、CRM訓練、非常救難対策訓練等を実施し、知識や技術のリフレッシュを図るとともに、緊急時における乗務員相互のコミュニケーションや連携力、指揮統率及び判断・意思決定の能力向上に努めています。
 また63歳以上の運航乗務員は、これらの定期訓練に加えて通達に基づいた加齢付加訓練を半年に1度実施し、緊急時の操作等について能力の維持・向上に努めています。
 定期審査では、運航乗務員として必要な知識及び能力を有しているかを判定するため、技能および路線の審査を年1回ずつ受け合格することが求められます。弊社は2006年8月に指定本邦航空運送事業者としての指定を受け、定期的に実施される機長の資格審査については、国の審査官に代わって国土交通大臣の指名を受けた自社の査察操縦士が実施しています。安全に対する高い意識と全社一丸となった取り組みにより、厳格な審査を実施しています。

(注)LOFT(指定訓練)訓練
運航乗務員に対し、主として操縦室における乗務員の連携並びに指揮統率及び判断・意思決定の能力向上を目的とし行う訓練。
(運航乗務員実機訓練の様子)

整備従事者

 整備従事者は、高度で専門的な知識・能力・経験が必要であり、航空機整備に携わるためには資格が必要です。まず社内作業者資格を得た後、経験を積みながら、「一等航空運航整備士」、「一等航空整備士」の国家資格の取得を目指します。必要な国家資格の取得後、さらに社内訓練や実務経験を積んだ後、社内審査の合格により「確認主任者」の社内資格が付与され確認行為が行えるようになります。
 全ての整備従事者は、必要な知識の維持・向上を図るため、それぞれの持つ資格に応じた定期訓練(確認主任者、整備員、領収検査員、整備関係者等)を2年毎に実施し、航空法や社内規定の確認、品質管理や領収検査に関する事項、また近年発生した不具合事象の振り返り等を行っています。

(整備士養成訓練の様子)

客室乗務員

 客室乗務員は、入社後に必要な各種訓練を受け、社内審査に合格した後、乗務資格が付与されます。保安要員としての資格維持および技量向上のため、定期的に訓練(非常救難対策訓練、CRM訓練、救急看護、危険物教育訓練等)を行っております。
 非常救難対策訓練では、緊急事態を想定した実技演習、緊急着陸水、火災、急減圧、非常口の操作、非常用器材の取扱い、不法行為等に対する措置等の訓練を実施しています。

(客室乗務員訓練の様子)

地上運航従事者(運航管理者、運航支援者)

 地上運航従事者は、運航乗務員と連携して航空機の運航方針を決め、安全に目的地に到着するまでのサポートを行うために、専門的な知識や技能と資格が必要です。まず、「運航支援者」として経験を積んだ後、国家資格である「運航管理者技能検定」に合格し、さらに社内任用訓練や審査を経て「運航管理者」として社内資格が付与されます。発令された後も、毎年定期資格審査を実施し、運航管理業務に必要な知識および技量が維持されていることを確認しています。
 また、知識の維持・向上を目的として、運航管理に関する基本的事項(ヒューマンファクターズ、運航基準等)および冬季気象現象等についての定期訓練を年1回実施しています。その他、新しい機種、路線、運航方式等が導入される際には、必要に応じて随時訓練を実施しています。

(飛行監視及び乗務員とのブリーフィングの様子)

3-5 アルコール対策への取り組み

 2018年度に運航乗務員による飲酒事案を発生させたことに伴い、国土交通省より厳重注意を受けました。これを踏まえ、再発防止策として以下の対策を継続して実施しています。

  1. アルコール検査の厳格化
     飲酒に対する厳しい基準を設定し、高精度のアルコール検知器を配置して検査を実施しています。
  2. 飲酒意識の改革
     全社員へのアルコール教育の実施、およびアルコール依存症傾向の社員の把握と指導を行っています。
  3. 飲酒対策会議の開催
     毎月飲酒対策会議を開催し、各部署の対策実施状況の確認、運用面での課題の把握と対策に努めています。
  4. ASK飲酒運転防止インストラクター養成
     飲酒に対する不安や悩みを抱えている社員のケア及びサポートができる体制を構築し、飲酒傾向の早期把握、対応を行うためにインストラクターの養成を行っています。

3-6 第三者による評価

安全監査立入検査

 2022年度は、国土交通省航空局による安全監査立入検査を受検し、指摘事項はありませんでした。

ANA社によるコードシェア監査

 弊社は、ANA社との間で共同運航(コードシェア)を実施しています。継続して共同運航を実施するためには、弊社の安全管理体制がIOSA(IATA Operational Safety Audit)と同等の安全品質を所持している航空会社であることが求められます。
 IOSA基準の安全品質を所持していることを確認するため、ANA社より2年に1回、最新かつ有効な国際的な基準であるISARP's(IOSA Standards and Recommended Practice)を監査基準としてコードシェア監査を受審しています。

3-7 新型コロナウイルス対策への取り組み

 世界的に蔓延している新型コロナウイルスは、終息に向かいつつある状況ですが、弊社は安全を最優先とした運航体制の堅持を第一に、「マスク着用の考え方の見直し」と「着用が効果的な場面の周知等」に関する政府発表の内容を踏まえ、感染予防対策を講じ、公共交通機関の使命として毎日就航全路線の運航を続けています。

  1. 搭乗手続き
     自動チェックイン機や車いすは定期的に消毒を行っています。
  2. 搭乗口
     搭乗旅客用に消毒液を準備しています。
  3. 機体
     機内の空気は常に機外から新しい空気を取り入れ循環させ、その後機外に排出させることにより約3分で入れ替わる仕組みになっています。
     弊社が運航する全ての航空機には、機内で循環する空気を清潔に保つための高性能空気フィルターを装備しています。このフィルターはウィルスや細菌などの粒子を99.9%取り除く性能があるものです。
  4. 機内
     客室乗務員は、常時マスク・手袋を着用しておりましたが、2023年3月13日以降は、政府の基本的対処方針並びに定期航空協会のガイドラインに基づき、マスク着用は個人の判断としています。

3-8 安全に関する社内啓発活動

 弊社は、SMSをより有効で効果的なものにしていくため、社員の理解促進と意識向上に向けた種々の安全啓発活動を継続的に実施しています。

2022年度の活動内容

  1. 新年度安全ポスターを作成、掲示
     安全方針、安全重点施策、安全指標・安全目標値を記載した、社内掲示用ポスターを作成、各職場に掲示しました。


(安全ポスター)

  1. タービュランスセーフティキャンペーン
     機内で放映している「安全ビデオ」の視聴を全社員に促し、タービュランスに関する認識、手順の再確認、周知を図り、意識啓発を行いました。
    • 第1回2022年9月26日~10月26日
    • 第2回2023年3月15日~4月15日


(安全ビデオ)

  1. 飲酒問題への取り組み
     定期航空協会のアルコール相談窓口の利用促進、アルコール関連問題啓発セミナーの参加を促し、アルコール問題に対し、全社的な意識向上を図りました。
    • 第1回アルコール関連問題啓発月間:2022年5月1日~5月31日
    • 第2回アルコール関連問題啓発月間:2022年11月7日~11月30日
  1. ヒヤリハット投稿の強化
     安全重点施策および安全指標・安全目標値の達成に向けて、各部門において未然防止活動の促進を図りました。
  1. 社内安全講演会の開催
     例年、安全強化期間において社内外の講師による講演を実施しており、今年度はグループ会社である株式会社ソラシドエアと合同で実施し、熊本大学名誉教授を招いて「元気で安全な組織作り」についての講演をしていただき、航空安全を追及するうえで意識しなければいけないことや、組織間のコミュニケーションの重要性について理解を深めました。
     2022年10月25日開催され、会場及び動画視聴含め135名が参加しました。


(安全講演会)

  1. 安全啓発誌「Safe DO」の発行
     各部署からメンバーを選出し、社内外の安全への取り組み事例や事故事例、インシデントの紹介、安全に関する法令や方針の変更等、安全に関する情報を幅広く掲載する冊子を定期的に発行しています。
     今年度はグループ会社であるソラシドエア社と共同で発行し、社内イントラネットを通して全社員へ共有しました。


(安全啓発誌「Safe DO」)

  1. 「機内緊急事態発生時の援助方法」出前講座の実施
     緊急時に求められる最低限必要な知識を確認し理解を深めるため、全社員を対象に実施しました。
     「機内緊急事態発生時の援助方法」出前講座は19回実施し112名の社員が参加しました。


(出前講座)

  1. 安全教育
     SMSの浸透を図るため、要員に対する教育・訓練を実施し、組織内の安全文化の醸成を図りました。
     初期安全教育(主に新入社員や出向者が受講)は121名が受講し、初期安全教育を受講してから翌年度以降、1年に一回実施する定期安全教育は883名が受講しました。
  1. 御巣鷹山慰霊訪問
     航空に携わる者として、事故の犠牲になられた方々を慰霊するとともに、事故の悲惨さ、安全を身近に感じることで、社員の安全意識向上を図りました。
     2022年11月10日に御巣鷹山へ慰霊訪問し、42名の社員が参加しました。


(御巣鷹山での慰霊登山)

  1. 安全巡回
     年末年始の多客期に社長および安全統括管理者による職場巡回を行い、現場社員とコミュニケーションを図りました。
     安全巡回は、羽田を含めた就航地空港の各基地を訪問し、合計で7回実施しました。


(安全巡回)

  1. 安全研修
     安全について考えることを目的として、2022年度は特定非営利活動法人ASK代表、今成様をお招きし、「飲酒事案の根絶に向けて」に関する講話をいただき、飲酒事案に対する理解を深めるとともに安全意識の向上を図りました。
     2023年3月2日に実施され経営層、管理職層の38名が参加されました。


(安全研修)

3-9 安全文化の醸成

全社員を対象とした安全調査アンケートの実施(11月)

 社員の安全に関する意識レベル、階層・組織間における意識レベルのギャップを測定することを目的として行っております。2022年度は経営層と管理職層、現業層で考え方や捉え方にギャップがあることから、経営層に限らず部門の管理者層が積極的に職場に出向き現業層との更なるコミュニケーションを図ることで、経営層の考え等を直接伝える機会を設けることにより、現業層との温度差を改善します。また、安全啓発イベントに経営層が積極的に参加することで、現業層との交流の場を積極的に図っていきます。

社員と経営層との対話活動

 安全統括管理者が現場に出向き、社員と直接コミュニケーションを図る機会を設けています。
 今年度は2回開催して、現場の社員と積極的に意見交換を行い、安全意識の向上と安全文化の醸成を図りました。


(安全統括管理者との安全対話)

テーマ 参加者数
第1回 「2021年度航空局マネジメントレター」における当社の課題と対応 22
第2回 2022年度の安全アンケート結果の分析・評価 18

社員表彰

 褒める文化の醸成により、社員の安全意識のさらなる向上を目的として社員表彰を行っており、各部門において、ヒヤリハット報告から「有形活用」に繋がることで安全に寄与したことや、イレギュラーを未然に防いだこと、航空機の不具合を早期に発見したことを行った社員を表彰します。

<運航本部>
  1. 本部長表彰:2名
<整備本部>
  1. 本部長表彰:1名
  2. GOOD JOB賞表彰:6名
<運送本部>
  1. ヒヤリハット表彰:8名
  2. GOOD JOB表彰:8名
  3. アサーション表彰:10名


(本部長表彰)

4.使用機材および輸送実績

4-1 使用機材および輸送実績

使用機材情報

機種 機数(注1) 座席数 平均年間飛行時間(注2) 平均年間飛行回数(注2) 導入開始時期 平均機齢
ボーイング
767-300ER
4 288/270 3,184:47 2,057.75 1998.3.27 19年09ヵ月
ボーイング
737-700
8 144 2,967:46 1,785.25 2012.10.23 15年10ヵ月

弊社全体の平均機齢:17年02カ月

(注1)
2023年3月31日時点での各型式の保有機数です。
(注2)
それぞれ年間の飛行時間と飛行回数を、各型式の年度末時点の保有機数で除した値です。

機種別輸送実績(注1) ( )は前年度数値

機種 便数 座席キロ(注2) 旅客キロ(注2)
ボーイング
767-300
8,231(6,672) 2,110,579(1,740,556) 1,427,498(838,457)
ボーイング
737-700
14,282(12,347) 2,064,297(1,748,045) 1,456,544(859,436)
合計 22,513(19,019) 4,174,876(3,488,601) 2,884,042(1,697,893)

路線別輸送実績(注1)

路線 便数 座席キロ(注2) 旅客キロ(注2)
羽田 ⇔ 札幌 9,019 1,843,709 1,286,513
羽田 ⇔ 旭川 2,176 562,626 390,979
羽田 ⇔ 函館 1,423 249,953 177,983
羽田 ⇔ 女満別 1,510 267,383 172,075
羽田 ⇔ 帯広 2,078 300,515 197,727
羽田 ⇔ 釧路 1,432 212,807 137,113
札幌 ⇔ 仙台 1,433 137,018 72,159
札幌 ⇔ 神戸 1,454 261,929 201,106
札幌 ⇔ 福岡(注3) 538 125,040 97,101
札幌 ⇔ 中部 724 113,014 86,449
函館 ⇔ 中部 722 99,809 64,013
羽田 ⇔ 羽田(遊覧飛行) 1 154 103
帯広 ⇔ 神戸(チャーター便) 3 919 721
合計 (注4) 22,513 4,174,876 2,884,042
(注1)
上記輸送実績には、ANAとのコードシェア運航に伴う座席販売分を含みます
(注2)
座席キロ : 各飛行区間の提供座席数にその区間の距離を乗じたものです。
旅客キロ : 各飛行区間の有償旅客数にその区間の距離を乗じたものです。
(単位:千座席キロ・千旅客キロ)
(注3)
2022年7月 就航
(注4)
合計の値が、各路線の合計値と異なるのは四捨五入によるものです。

5.運航上のトラブル発生状況等

 航空法第111条の4の規定に基づき、本邦航空運送事業者は、航空機の正常な運航に安全上の支障を及ぼす事態(事故、重大インシデント、その他の安全上のトラブル)を国に報告することが義務付けられています。

5-1 事故

 弊社は、創業以来、航空事故(注)の発生はありません。

(注)航空事故
 航空法第76条、航空法施行規則第165条の2および第165条の3で定める、航空機の運航によって発生した人の死傷(重傷以上)、航空機の墜落、衝突または火災、航行中の航空機の損傷(その修理が大修理に該当するもの)などの事態が該当し、国土交通省が認定するもの。

5-2 重大インシデント

 弊社は、創業以来、重大インシデント(注)の発生はありません。

(注)重大インシデント
 航空法第76条の2、航空法施行規則第166条の4に定める、航空事故には至らないものの、事故が発生するおそれがあったと認められるもので、航行中他の航空機との衝突又は接触のおそれがあったと認められた時、滑走路からの逸脱、非常脱出、機内における火災・煙の発生および気圧の異常な低下、異常な気象状態との遭遇などの事態が該当し、国土交通省が認定するもの。

5-3 安全上のトラブル(義務報告)

 2022年度に弊社が国に報告した「安全上のトラブル」(注)は31件でした。いずれの事象も原因を分析し、必要な対応と再発防止策を実行しています。
 発生した全ての「安全上のトラブル」に対して、担当部署において原因の調査分析を行い、必要な改善、対策を進め、再発防止に取り組んでいます。

(注)安全上のトラブル(義務報告)
 航空法第111条の4、航空法施行規則第221条の2第3号、第4号に定める、航空事故や重大インシデント以外の、その他の航空機の正常な運航に安全上の支障を及ぼす事態で、国土交通省への報告が義務付けられたもの。
 これらのトラブルが積み重なった場合には事故を誘発することにもなりかねないものの、個々のトラブルは航空機の安全運航にほとんど影響がなく、直ちに航空事故につながるものではありません。

年度別の発生状況

年度 2020 2021 2022
発生件数 24 27 31
1万便当たりの発生件数 17.7 14.2 13.8

 安全上のトラブル報告件数は31件で前年度より4件増加しました。前年度に比べ整備部門は2件減少し、運航部門は5件増加、客室部門は1件増加、空港部門は同数でした。特に整備部門では昨年度多発した誤部品装着に対して対策を実施したことで減少しました。

 1万便当たりの報告件数は、総数が4件増加(前年比115%)しましたが、運航便数が同122%だったことから減少となりました。

トラブル別の発生状況

報告内容 発生件数
2022年度 2021年度
システムの不具合
・発動機、プロペラ、回転翼及び補助動力装置が正常に機能しない状態となった事態 (0) (0)
・機内放送が使用できないような機内放送装置の故障 (0) (0)
・燃料搭載量の表示が喪失又は誤表示となる燃料油量計系統の故障 (2) (0)
・抽出空気の漏洩を検知できない抽出空気漏洩感知システムの故障 (0) (0)
・警報機能の機能喪失 (0) (0)
非常用の装置の故障 1
・非常脱出口の故障 (0) (0)
・非常用照明灯の一部不点灯 (2) (0)
・非常用装置、非常用装備品の故障 (1) (1)
・火災・煙の検知機能の喪失又は検知機能が低下するおそれがある警報装置の故障又は欠陥 (0) (0)
規定値を超えた運航
・経路または高度からの著しい逸脱 (1) (1)
・運用限界を超えた事態 (2) (1)
機器からの指示による緊急の操作など 1
・航空機衝突防止装置(TCAS)(注1)の回避指示に従った回避操作 (6) (0)
・対地接近警報装置(GPWS)(注2)の警報に基づく回避操作 (0) (0)
・離陸時に、臨界点速度(V1)付近又は臨界点速度(V1)を超えた速度で発生した安全を損なう又はそのおそれのある事態 (0) (1)
その他 17 23
・航空機乗務員が運航規程又は付属書に基づくアルコール検査を適切に行わなかった事態 (0) (1)
・運送不可物品の輸送 (3) (3)
・主要な装備品について、必要な証明書が添付されていることを確認せずに装備した事態 (1) (1)
・事実と異なる整備内容によって、整備の確認又は航空機基準適合証の発行を行った事態 (3) (2)
・耐空性改善通報の整備作業要求等によらず運航した事態 (1) (1)
・装備品または部品の誤った取付け (2) (10)
・航空機構成部品が外れた事態 (2) (1)
・フラップ又はスラット等の非対称な作動 (1) (0)
・主操縦系統又は関連タブ及びロックシステムにおける動作の制限、固着、鈍い反応又は反応の遅れ (1) (2)
・逆推力の不作動又は意図しない作動 (1) (1)
・推力又は回転数の制御不能 (1) (0)
・機体部品の一部脱落 (1) (0)
・機体及び装備品等の整備間隔又は装備品等の限界使用時間を超えて運航した事態 (0) (1)
総件数 31 27

(注)カッコは内訳

安全上のトラブルの概要

 2022年度、安全上のトラブルについて事例別の概要は以下のとおりです。
【システムの不具合】
 2件発生しましたが、原因となった部品の整備処置及び機能確認を実施しました。同事象については引き続き発生状況をモニターしていきます。
【非常用の装置の故障】
 3件発生しましたが、原因となった部品の交換等の整備処置および機能確認を実施しました。同事象については、不具合事象を社内で周知し、当該機以外の機体についても点検を実施しました。
【規定値を超えた運航】
 3件発生の内、運用限界を超えた事態については、いずれのケースも一時的なものであり、適切に対応しており運航の安全に影響を与えるものではありません。
 経路または高度からの著しい逸脱は、直ちに適切な経路に復帰するための措置を実施し、正常に着陸しました。本事象に際し、対策として必要な教育訓練を実施しました。
【機器からの指示による緊急の操作など】
 6件発生しましたが、いずれも航空機衝突防止装置(TCAS)(注1)による事象であり、速やかに機材点検を実施し、機材に異常がないことを確認しています。
【その他】
 その他報告は17件ありました。輸送不可物品の輸送3件は、160whを超えるモバイルバッテリーの輸送が1件、輸送不可物品である酢酸エチルの輸送が1件、バッテリー内臓型ヘアアイロンの輸送が1件ありました。
 上記事象発生に伴い今後お客様に対し、輸送不可物品の効果的な周知を実施します。
 機体整備作業中に誤った部品の取付けが2件確認されましたが、正規部品への交換を行い、機能確認を行いました。今回の誤った部品取付けを踏まえ、作業者間の相互確認の徹底と整備従事者への再教育を行うなどの、再発防止策を実施しました。

(注1) 航空機衝突防止装置(TCAS)
 自機の周辺に他機が存在することを運航乗務員に知らせ、かつ回避操作を自動的に指示するものです。通常の管制指示による運航の場合でも、他機との位置関係等により作動することがあります。
(注2) 対地接近警報装置(GPWS)
 航空機が地表や海面に接近した場合に運航乗務員に警報を発する装置ですが、危険がない場合でも地形等により作動することがあります。これらは、機器の指示に従って運航乗務員が適切な操作を行うことにより、安全上の問題が生じない設計となっており、いずれのケースでも、機器の指示に従った適切な操作が行われています。
【具体例】
 航空機Aが高度31,000フィートを巡航中、航空機Bが30,000フィートで水平飛行に移行する予定で上昇していく状況において、TCAS装置は、航空機Bが水平飛行に移る予定であることまでは認識できないために、航空機Bがそのまま上昇を続けて航空機AとBが接近してしまう可能性を排除するため、安全上指示を行います。

安全上のトラブルの実績

【ヒューマンエラーに起因する安全上のトラブル報告件数(航空局届出指標)】

ヒューマンエラーに起因する1万便当たりの安全上のトラブル報告件数
年度 2020 2021 2022
目標値 (未設定) 4.05件 5.54件
実績値 4.43件 8.70件 4.88件

 ヒューマンエラーに起因する報告件数は11件ありましたが、内訳は整備部門が9件、運航部門が1件、客室部門が1件です。

 1万便当たりのヒューマンエラー件数は4.88件で、2年ぶりに減少しました。昨年度実績(8.70件)より大幅に減少しましたが、整備部門の誤部品装着事案が10件から2件に減少したことが寄与しております。

【発生から90日以内に最終再発防止策提出の達成率(社内指標)】

年度 2020 2021 2022
目標値 (未設定) 80% 80%
実績値 79.2% 83.9% 93.8%

 安全上のトラブルに対する要因分析、対策立案を可能な限り速やかに実施することは早期の未然防止・再発防止に繋がり、安全性の向上に重要なことから、全社で取り組みを強化しています。

 90日以上経過した事象は2件で処理率は93%となり目標(80%以上)を大きく達成しました。昨年度(84%)から9ポイント改善し過去最高を更新し、中でも2022年度に発生した事案の処理率は100%となっています。

機種別の発生状況

 型式ごとで発生した、安全上のトラブル報告件数はボーイング767が15件、ボーイング737が16件でした。ボーイング767では機体故障や機体整備時に発生した事象が大多数を占めており、ボーイング737は、TCAS(機器からの指示による緊急の操作)の作動や運送不可物品の輸送等の不具合割合が多くを占めました。

5-4 イレギュラー運航(航空局基準)

 2022年度のイレギュラー運航(注)の発生は1件でした。11月にボーイング767型機が羽田空港に向け11,000ftを降下中、第1(左側)エンジンの制御系統に不具合が発生したため、当該エンジンを停止させ、航空交通管制上の優先権を要請し着陸しました。本事象に対しての原因分析を行い、不具合を早期に発見することができるよう、異常値を検知できるシステムを設計し運用を開始しています。

イレギュラー運航の件数
年度 2020 2021 2022
ボーイング767-300 0 3 1
ボーイング737-700 3 5 0
合計 3 8 1

(注) イレギュラー運航

 イレギュラー運航とは、航空機の多重化されたシステムの一部のみの不具合が発生した場合に乗員がマニュアルに従い措置したうえで万全を期して引き返しなどを行った結果、目的地などの予定が変更されたものなどを指します。一般的には運航の安全に直ちに影響を及ぼすような異常事態ではありません。
 具体的には、次のような場合が、イレギュラー運航に該当します(ただし、航空事故又は重大インシデントに該当する場合を除きます)。

  1. 離陸後に目的地を変更した場合(機材の不具合等によるものに限ります。)
  2. 出発地に引き返した場合(機材の不具合等によるものに限ります。)
  3. 航空交通管制上の優先権を必要とする旨を通報した場合(機材の不具合等によるものに限ります。)
  4. 航空機が他の航空機又は物件と接触した場合
  5. 航空機が滑走路から逸脱した場合
  6. 滑走路を閉鎖する必要があるような運航があった場合(滑走路点検のために閉鎖するものを除きます。)

 事象の概要は、国土交通省のホームページ内(航空安全に関する統計、報告等)にも掲載されています。
 https://www.mlit.go.jp/koku/15_bf_000191.html

6.2022年度および2023年度の安全指標・安全目標値

6-1 国からの命令・指導等

 2022年度、弊社が国土交通省から受けた行政処分、行政指導等はありませんでした。

6-2 2022年度 安全指標・安全目標値・実績

 安全指標および安全目標値の実績は以下のとおり、全ての目標を達成しました。

安全指標 目標値 実績
事故・重大インシデント 0件 0件
アルコール検査での検知・失念 0件 0件
ヒューマンエラーに起因する安全上のトラブル報告件数(委託先を含む) 5.54件/1万便 4.88件/1万便

6-3 2023年度 安全指標・安全目標値

 安全指標および安全目標値を以下のとおり設定しました。

安全指標 目標値
事故・重大インシデント 0件
アルコール検査での検知・失念 0件
ヒューマンエラーに起因する安全上のトラブル報告件数(委託先を含む) 4.54件/1万便

 「事故・重大インシデント0件」については、航空会社の最大の使命として、引き続き安全指標・安全目標値に定めます。「アルコール検査での検知・失念」については、前年度0件を達成しましたが、本事案を発生させないよう高い意識をもって0件を目指します。
 また、「ヒューマンエラーに起因する安全上のトラブル報告件数(委託先を含む)4.54件/1万便」を掲げます。

2022年度 安全報告書
株式会社AIRDO
編集:安全推進室 安全推進部

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