安全報告書
2024年度 安全報告書
この安全報告書は、航空法第111条の6の規定に基づき、AIRDO(エア・ドゥ)の安全確保のための取り組みや安全の実態をまとめ、ご利用のお客様に広くご理解頂くとともに、会社のさらなる安全意識の向上および安全への取り組みのいっそうの促進を図るために公表するものです。
株式会社AIRDO
この安全報告書は、航空法第111条の6に基づき、弊社の安全への取り組みをまとめたものです。
本報告書は、2024年4月1日から2025年3月31日までを対象期間とし、ホームページにて公表しています。
「2024年度 安全報告書」の発行にあたって
平素よりAIRDOをご利用いただき、誠にありがとうございます。
「2024年度 安全報告書」を作成しましたのでぜひご一読いただき、弊社の安全に関わる取り組みについてご理解賜りますよう
お願い申し上げます。
2024年度は、前年に引き続き高需要が続き、1月には累計搭乗者数が4000万人を達成しました。また、昨年10月には整備部門が株式会社ソラシドエアとの共同持株会社(株式会社リージョナルプラスウィングス)への集約、また、オペレーションの一体化を無事に始動することができ、協業効果の各種施策を着実に推進しております。
弊社は2024年度の安全方針として、「いかなる環境下においても安全を堅持する」を掲げ、全社を挙げての安全管理システム(SMS)の推進をはじめ、各種の安全対策を確実に実施したことで、全ての安全目標を達成することができました。さらに初便就航から継続している「航空事故、重大インシデント0件」の記録につきましては、本年度におきましても達成することができました。
しかしながら、昨日までの安全が今日からの安全を保障するものではありません。安全に対しては従業員に芽生える過信や慢心を戒め、高い意識と確実な行動を継続してまいります。
引き続き、全社員が安全運航を第一に心がけ、安心な旅と新たな価値の提供を通じて、地域社会の発展に貢献してまいります。
皆さまの変わらぬご愛顧とともに、一層のご指導ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
1.安全に関する基本方針
1-1 企業理念・安全行動指針
弊社は、企業理念の冒頭において「安全を絶対的使命として追求します」との決意を述べ、この理念の下、会社として航空の安全を追求しています。
企 業 理 念
- 安全を絶対的使命として追求します
- お客様に感動していただける空の旅を提供します
- コスト意識を持って企業競争力を強化します
- 人を活かし育み、活力ある企業風土を創造します
- 北海道の翼として地域社会の発展に貢献します
弊社は、企業理念に掲げている「安全を絶対的使命として追求」するため、安全行動指針を定め、全役職員がこの安全行動指針に従い、業務を遂行しています。
安 全 行 動 指 針
- 曖昧な判断はせず、確信がない場合は安全を最優先に行動します
- 情報は迅速かつ的確に報告し、組織を超えて共有します
- 周囲の意見に耳を傾け、自分の考えを声にして、コミュニケーションを大切にします
- 教訓から学び、自覚と責任を持ってプロフェッショナルとしての技倆を高め続けます
1-2 安全方針
経営の最高責任者(代表取締役社長)は、安全最優先の決意を示した「安全方針」を設定しています。
2024年度安全方針
航空会社にとって、安全は何ものにも代えがたい、会社存続の基盤であり、絶対的使命として何よりも優先させるべきものです。
当社の「企業理念」では冒頭で、
安全を絶対的使命として追求します
と謳い、安全最優先の固い決意を表しています。
2024年度の安全方針は、以下のとおりに定めています。
安全方針
- いかなる環境下においても安全を堅持する
重点施策
- 基準・手順の順守および基本動作の徹底
- 変更管理の確実な実施による未然防止の強化
- 再発防止対策の形骸化防止
- 現場情報の活用
安全指標・安全目標値
- 「事故・重大インシデント 0件」
- 「アルコール検査での検知・失念 0件」
- 「ヒューマンエラーに起因する安全上のトラブル報告件数(委託先を含む) 4.08件/1万便 以下」
2.安全確保の体制
弊社は、航空法に基づき、「安全管理規程」において、安全管理の方針、体制、実施方法について定めています。また、安全統括管理者を選任し、経営トップから運航、整備、客室、空港業務などに直接携わる社員を含む会社全体で、航空輸送の安全に対し組織的に取り組む「安全管理システム」(以下「SMS」という。)を構築しています。
2-1 安全管理システムの概要
この仕組みにおいて、P(PLAN:計画)、D(DO:実施)、C(CHECK:問題把握)、A(ACTION:改善)のサイクル(PDCAサイクル)を継続することにより、運航の安全の維持・向上を目指します。
弊社の「安全管理規程」では、PDCAサイクルについて、次のように定めています。
- 安全方針(PLAN)
企業理念に基づき、会社の安全に関わる基本的な方針および目標を設定し、運航の安全についての組織および責任と権限を定めるとともに、SMSの適切性、妥当性および有効性を確保し、継続的改善を図っていくためのマネジメントレビューを設定する。 - 運航の実施/運送の提供(DO)
日常的に運航の実施・運送の提供の業務に従事する社員についての具体的な行動基準を定める。さらに運航の安全に関わる日常的な業務の外部委託に対する管理について定める。 - 問題把握(CHECK)と改善(ACTION)
運航の実施・運送の提供に伴う問題点の把握、継続的な再発防止対策および未然防止対策の実施による運航の安全性向上ならびに内部安全監査による定期的なSMSの改善について定める。さらに、SMSを有効で効果的なものにするための安全推進の一般的な種々の活動について定める。 - 運航体制
運航体制の維持および改善を図り、SMSの有効性を継続的に改善するために必要な資源の供給について定める。さらに運航の安全・品質に関わる業務の実施基準・手順の設定について定める。
2-2 安全確保に関する組織
弊社の安全確保の組織体制は、以下に示すとおりです。
組織図と従業員数(2025年3月31日現在:1,060名)

※1 業務の管理の受委託にて株式会社ソラシドエアと当社の共同持ち株会社である株式会社リージョナルプラス
ウイングス(以下、RPW)が当社の整備部門として機能しています。
| 内部監査室 | 安全推進室 | 北海道室 | CS推進室 | 人事部 | 総務部 | 財務部 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 3名 | 13名 | 11名 | 5名 | 20名 | 21名 | 11名 |
| IT推進部 | 企画部 | オペレーション ディレクター室 |
マーケティング 本部 |
運送本部 | 運航本部 | 整備監理部 |
| 8名 | 11名 | 4名 | 47名 | 520名 | 207名 | 1名(※2) |
※2 整備部門としては整備作業、整備管理業務を担当するRPW整備事業室に333名が在籍しています。
運航に携わる各職種の人数 (2025年3月31日現在)
| 職種 | 人数 | 備考 |
|---|---|---|
| 運航乗務員 | 144名 | 訓練生含む |
| 客室乗務員 | 270名 | |
| 地上運航従事者 | 18名 | うち運航管理者17名 |
| 整備従事者 (RPW整備事業室) |
196名 | うち有資格整備士135名 |
※運航に関わる委託先の人数は除く
2-3 責任と権限
安全の維持・向上を目的とするSMSの継続的な改善を図り、安全を確保するための、委員会組織、役職者、社員の責任と権限は以下のとおりです。

-
安全推進委員会
すべての常勤役員、生産部門の本部長等により構成され、会社の安全に関わる重要事項の最高決議機関として、原則、毎月1回開催しています。安全に関する基本方針を策定し、安全重点施策の実施状況や達成状況を確認、その結果に基づき会社全体の安全対策の確認、監視、助言、勧告、指示を行います。
-
社長(経営および運航安全に関する最高責任者)
経営の最高責任者としての責務を全うするために、以下の職務を遂行しています。
- 「安全は経営の最優先事項である」旨を含め、安全コミットメントを行うと共に、安全に関わる方針を決定し明示する。
- SMSが、引き続き適切で妥当性があり、かつ有効であることを確実にするために、定期的にマネジメントレビューを行う。
- 安全の推進に必要な経営資源の確保と配分を行い、または各部門に指示し、定期的に確認を行う。
- 安全施策・安全投資等輸送の安全確保にかかわる安全統括管理者の意見を尊重する。
- 該当する役員の義務と責任の中に安全の重要事項を含め、それらが実行されることを確実にする。
- 安全上の重要事項に関する経営上の意思決定に基づく指示を安全推進委員会に対し行う。
-
安全統括管理者
会社のSMSの維持、向上および日々の取り組みに対する統括的な管理を行う責任を有する者として、責任を全うするために、以下の職務を遂行する。
- 安全推進委員会に報告された事項について必要な助言、勧告を行う。
- 経営の立場から、SMSの継続的改善を推進し、安全の監視を行うと共に、安全施策 安全投資の決定など安全に関する重要な経営判断に直接関与する。
- 安全に関する事項について社長に報告すると共に、マネジメントレビューを支援する。
- 安全推進室長を通じてなされた各生産部門長からの報告について、適時必要な指示を安全推進室長に対して行う。
- 事故、インシデントが起きた場合、原因の究明や必要な勧告、提言などを行うため、調査会の設置を発動する。
- 会社の飲酒対策を統括管理する。
なお、弊社は安全統括管理者の選任については、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にあり、かつ、航空運送事業に関する一定の実務の経験その他の国土交通省令で定める要件を備える者のうちから安全統括管理者を選任し、国土交通大臣に届け出を行っています。
-
安全推進室長
輸送の安全を確保するための安全推進活動全般に関わる方針、計画を策定する責任者として、関係各部署とも連携し、安全に関わる基本方針および安全管理規程に基づく安全推進活動の総括を行います。また、マネジメントレビューの管理責任者として、安全に関わる課題の解決を目的に関係各部署への指示、提言ならびに支援を行います。
-
生産部門の部門長
自部門内の安全に関する責任者として、部門内の業務プロセスや手順を設定し、確実に実施・維持します。また、不安全事象の再発防止活動および未然防止活動を部門内において実施します。
-
従業員
安全に関する取り組みの実行責任者として、航空機運航の業務に対する安全リスク管理を行うとともに、許可を受けた航空運送事業者として求められる条件と制約および航空機の運航に適用される法令、基準を厳格に遵守します。
2-4 事故等の防止対策、事故等の発生時の対応及び災害への備えに関する概要
緊急事態発生時は、国に認可された運航規程に基づき、機長は発生した緊急事態の内容により、運航管理部門または管制機関等へ無線電話等によりその事態を報告することとしています。運航管理部門では、国の認可された運航規程に基づき自社機の運航状況を監視し、緊急事態が発生したことの通報を受けた場合または覚知した場合、当該機との通信連絡に努めるとともに、関係機関等へ連絡し援助を求めることとしています。
また、会社は災害発生時に被害の拡大防止、運航の維持や早期回復等社会的な復旧活動に共助的な役割を果たすことが求められています。なお、航空機の運航に係る内容は安全管理規程等に定めており、オペレーション以外の災害対応については大災害時の事業継続体制に関する計画に定めています。
2-5 輸送の安全に係る文書の整理及び管理に関する事項の概要
安全に係る文書については、維持・管理方法を安全管理規程、運航規程、整備規程、部門内で定めた社内規程類などに、安全に係る情報の伝達体制や方法を定めると共に、これを適切に運用し、管理・保管を確実に実施しています。
2-6 各組織の機能と役割の概要
各部門の機能と役割は以下に示すとおりです。
-
安全推進室
安全に対する経営の方針に基づき、安全に関わる問題について社内各部門および社外の関連する諸機関との調整を行い、会社のSMSの推進と継続的な改善等の具体的な指揮を行います。また、社内安全監査や実運航データに基づくモニターを担当し、必要な教育や助言等を実施します。
-
運航本部
会社の経営方針に基づき、運航部門に関する生産業務全般を担当し、安全運航の徹底と経済的な生産業務の遂行を行います。
-
運送本部
会社の経営方針に基づき、運航管理・客室・空港部門の生産業務全般を担当するとともに、航空保安の徹底ならびに顧客ニーズの取りまとめを行います。
-
整備部門(整備監理部/RPW整備事業室)
会社の経営方針に基づき、整備監理部がRPW整備事業室への監理業務を、RPW整備事業室が整備部門に関する生産業務全般を担当することで、安全運航の徹底と経済的な生産業務の遂行を行います。
なお、RPW整備事業室への監査は整備監理部が実施しています。(主な委託先)
- 機体
- ANA JV(日本)、MRO Japan (日本)、STAECO (中国)、
HAECO XIAMEN(中国)、EGAT(台湾) - 装備品
- Honeywell Aerospace Singapore (シンガポール)
Goodrich Asia Pacific (香港)
3.安全確保への取り組み
安全管理の方針に則り、安全管理システムを円滑に機能させるために以下のような安全管理を実施しています。
3-1 マネジメントレビュー
弊社では、安全管理の適切性、妥当性、有効性を確実にし、継続的改善を図っていくことを目的として安全に関する取り組みの総括を安全統括管理者から社長に報告しています。具体的には、安全目標の達成状況や安全重点施策の進捗、社員の安全意識などの幅広い情報を収集し分析評価を行った結果に基づき報告されます。その結果を基に社長は、安全方針の妥当性、安全管理およびプロセス改善の要否、取り組むべき課題の有無、必要な資源の割り当ての要否などを総合的に考慮し、必要に応じて対応の指示を行います。その指示に基づき各部門は、安全施策の策定や中・長期的な安全の取り組みに反映しています。
3-2 日常運航における問題点の把握および対応
日常運航での安全に関わる問題点の把握および全社的なフィードバックの体制については、以下の方法により全社的な対応を図っています。
-
安全推進委員会
安全推進委員会は、安全に関わる重要事項の最高決議機関として、安全に関わる重要事項の決定、マネジメントレビューの定期的な実施、組織を横断した情報の共有化等、SMSの推進・改善などを図るうえで重要な役割を果たしています。会議の席上では、日常運航における問題点について生産本部(運航本部・運送本部)および整備部門から月次で報告され、再発防止策、未然防止活動実施状況の確認などについて討議され、承認されます。合わせて、安全推進委員会委員長および安全統括管理者から安全に関する勧告や改善の指示が示されます。
-
安全部長会
安全部長会は、各専門機能(運航・整備・客室・空港)の主管部門長により行われる会議で、全社的にリスクの高い事象の把握と対応の進捗管理や、各専門機能におけるSMSの実施状況について共有し、組織横断的なSMSの推進を図ることを目的としています。
-
各専門機能における安全品質に関わる会議
各部門の安全品質に関わる会議を定期的に開催し、現場の再発防止策や未然防止活動の実施状況を把握するとともに、具体的なリスク評価を行い、安全部長会へ報告します。
また、現場のSMS実施状況を把握し、部門間の意思疎通を図ります。 -
Weekly Safety Report会議(WSR)
毎週開催する会議において日常運航にて発生したイレギュラー、不安全事象等についての対応状況および改善結果等、生産現場で発生している事象をタイムリーに社長を含めた経営層に対し情報を共有し、全社的な安全意識の向上を図ることを目的としています。
-
内部安全監査
会社のSMSが適切かつ有効に機能しているか、環境の変化に応じて継続的に改善されているかに着目し、SMSのPDCAサイクルの"Check:見直し"の機能を遂行しているのが内部安全監査です。弊社の内部安全監査は、各組織の個別業務および特定の機能に着目して社内横断的に実施する定期監査と、変化する環境へのSMS追従を確認する臨時監査で構成されています。これらの監査業務を担当するのは、社内規程で定められた所定の訓練を修了して資格発令された内部安全監査員で、公平で客観的な監査を実施するため、各自の専門性と監査員としての力量の向上に努めています。
2024年度は安全に関わる業務を対象に計17回の定期監査を実施し、監査側と被監査組織が「協働」してSMS改善プロセスを継続的に進めています。 -
安全報告制度
弊社では、運航に障害を及ぼす可能性があるあらゆる事象について、その報告手順を定め、安全報告制度として運用しています。その概要は次のとおりです。
- 法令上の義務報告
航空会社は、航空法により、「事故」「重大インシデント」「安全上のトラブル」などの「安全上の支障を及ぼす事態」について報告が義務付けられています。 - 社内規定に基づく報告
直接運航に携わる社員は、機長報告、客室乗務員報告、運航管理者報告、整備不具合事象報告等による報告が関係規定類により義務付けられています。 - 自発報告
ヒヤリハット事象に関して情報を収集し適切な対応を図り、不安全事象の未然防止活動に役立てるため、自発報告制度を設けています。特に出されたヒヤリハットの中で規定の改定やシステム改修などに繋がったものを当社では「有形活用」と呼んでいます。
- 法令上の義務報告
-
安全に関する改善提案
2024年度より、従業員が日常のオペレーションや業務の中で気づいた「安全に関する改善提案」を開始しました。この「安全に関する改善提案」は、安全に係る制度・組織、方針・目標、規定・基準、訓練、業務プロセスの改善、ヒューマンエラーの防止に関連したものを対象としています。2024年度は全社で8件の提案があり、安全性の向上やヒューマンエラーの防止に寄与しています。
-
飛行データ解析プログラム
運航の安全品質を向上させることを目的として、FOQA(Flight Operational Quality Assurance)プログラムを実施しています。このプログラムは、当社が運航する全ての便の飛行記録を収集し、解析・評価することで、日常運航の中の不安全要素を特定し、是正していくものです。また、収集した飛行記録をビジュアル画面に表示したDRAP(Data Review and Analysis Program)の機能を有効に活用し、その結果を運航乗務員および組織にフィードバックし日々の安全運航の維持に役立てています。
-
各生産本部(運航本部・運送本部)ならびに整備部門での活動
日常運航における問題点は、各部門において、前述の安全報告制度により組織的に把握されます。各部門では、報告された問題点に直ちに対処し、重要度に従って事例の周知、是正、再発防止策の対策を実施します。また、複数の本部にまたがる問題については、安全推進室が全社的な調整を図っています。いずれの場合も、安全に関わる重要な問題・事象は、安全推進委員会および航空局の所管部署に適時報告し当該事象の改善を図ります。
-
リスクマネジメント
弊社では、安全対策の策定や不具合などへの対応にあたり、以下のステップによるリスク管理を実施しています。
3-3 変更管理
社内外の環境変化に伴い、組織の拡大・縮小、設備・システム、プロセス・手順の変更等により意図せずハザードが生じ、新たなリスクが発生する可能性があります。弊社では、これらの変更により生じるリスクを把握し、必要な対策を取ってリスクを許容値内におさめるため変更管理を実施しています。
2024年度は引き続きソラシドエアとの協業に関したものや、旅客の新端末・SBG(Smart Boarding Gate)導入や新しい運用・体制導入等を実施しました。
3-4 運航に携わる各職種の定期訓練および審査の内容
弊社では、日常運航に携わる職種ごとに以下のような教育や訓練などを定期的に実施し、運航の安全を確保しています。
運航乗務員
定期訓練では、毎年その年に応じた訓練テーマを定め、能力維持と向上を図るため、フライトシミュレーターを用いた訓練を半年に一度行っています。その訓練には、いかなる状況下でも適切な対応ができるよう、通常は経験することのない異常な状態や緊急な状態等をシミュレートする内容も含まれ、不測の事態に備えた対応能力の維持向上に努めています。また、1年に1度、定期学科訓練やLOFT(指定訓練)(注)、CRM(Crew Resource Management)訓練、Cold Weather Operation学科訓練、非常救難対策訓練等を実施し、知識や技術のリフレッシュを図るとともに、緊急時における乗務員相互のコミュニケーションや連携力、指揮統率及び判断・意思決定の能力向上に努めています。さらに63歳以上の運航乗務員は、これらの定期訓練に加えて通達に基づいた加齢付加訓練を半年に1度実施し、緊急時の操作等について能力の維持・向上に努めています。
定期審査では、運航乗務員として必要な知識・能力を有しているかを判定するため、技能・路線の審査を年1回ずつ受け合格することが求められます。弊社は2006年8月に指定本邦航空運送事業者としての指定を受け、定期的に実施される機長の資格審査については、国の審査官に代わって国土交通大臣の指名を受けた自社の査察操縦士が実施しており、安全に対する高い意識と全社一丸となった取り組みにより、厳格な審査を実施しています。
また、弊社では2025年度6月に新しい訓練方式であるEBT(Evidenced-Based Training)を導入予定です。従来の訓練・審査では主にTechnical Skillの向上に重点を置いてきましたが、EBTではTechnical Skillに加えてNon-Technical Skillの向上に重点を置き、Competency(※1)を強化することを目的としています。Competency強化に重点を置いた訓練・審査により、実運航における課題への対処のみならず今まで経験したことのない事象にも対応できるようになることが期待されています。
- ※1 Competencyとは
- 業務において期待される成果を得るために求められる人間の行動指標所定の基準に従ってタスクを実施するために求められる「スキル(Skills:Technical Skills)及び Non-technical Skillsを含む」「知識(Knowledge」及び「姿勢Attitude」の組合せ。
客室乗務員
客室乗務員は、入社後に必要な各種訓練を受け、社内審査に合格した後、乗務資格が付与されます。保安要員としての資格維持および技量向上のため、定期的に訓練(非常救難対策訓練、CRM訓練、救急看護、危険物教育訓練等)を行っています。
非常救難対策訓練では、緊急事態を想定した実技演習、緊急着陸水、火災、急減圧、非常口の操作、非常用器材の取扱い、不法行為等に対する措置等の訓練を実施しています。
地上運航従事者(運航管理者、運航支援者)
地上運航従事者は、運航乗務員と連携して航空機の運航方針を決め、安全に目的地に到着するまでのサポートを行うために、専門的な知識や技能と資格が必要です。まず、社内資格である「運航支援者」として経験を積んだ後、国家資格である「運航管理者技能検定」に合格し、さらに社内任用訓練や審査を経て「運航管理者」として社内資格が付与されます。発令された後も、定期審査を毎年実施し、運航管理業務に必要な知識および技量が維持されていることを確認しています。
また、知識の維持・向上を目的として、運航管理に関する基本的事項(ヒューマンファクターズ、運航基準等)および冬季気象現象等についての定期訓練を年1回実施しています。その他、新しい機種、路線、運航方式等が導入される際には、必要に応じて随時訓練を実施しています。
整備従事者(整備業務の管理をRPWに委託)
整備従事者は、高度で専門的な知識・能力・経験が必要であり、航空機整備に携わるためには資格が必要です。まず作業者資格を得た後、経験を積みながら、「一等航空運航整備士」、「一等航空整備士」の国家資格の取得を目指します。必要な国家資格の取得後、さらに訓練や実務経験を積んだ後、審査の合格により「確認主任者」の資格が付与され確認行為が行えるようになります。
全ての整備従事者は、必要な知識の維持・向上を図るため、それぞれの持つ資格に応じた定期訓練(確認主任者、検査員、作業者、整備関係者等)を2年毎に実施し、航空法やRPW社内規定の確認、品質管理や領収検査に関する事項、また近年発生した不具合事象の振り返り等を行っています。

3-5 アルコール対策への取り組み
2018年度に運航乗務員による飲酒事案を発生させたことに伴い、国土交通省より厳重注意を受けました。これを踏まえ、再発防止策として以下の対策を継続して実施しています。
- アルコール検査の厳格化
飲酒に対する厳しい基準を設定し、高精度のアルコール検知器を配置して検査を実施しています。 - 飲酒意識の改革
全社員へのアルコール教育の実施、およびアルコール依存症傾向の社員の把握と指導を行っています。 - 飲酒対策会議の開催
隔月で飲酒対策会議を開催し、各部署の対策実施状況の確認、運用面での課題の把握と対策に努めています。 - 飲酒問題への取り組み
定期航空協会のアルコール相談窓口の利用促進、アルコール関連問題啓発セミナーの参加を促し、アルコール問題に対し、全社的な意識向上を図りました。- 第1回飲酒問題撲滅月間:2024年 6月1日~ 6月30日
- 第2回飲酒問題撲滅月間:2024年11月1日~11月30日
- ASK飲酒運転防止インストラクター養成
飲酒に対する不安や悩みを抱えている社員のケア及びサポートができる体制を構築し、飲酒傾向の早期把握、対応を行うためにインストラクターを養成しました。
3-6 第三者による評価
安全監査立入検査
2024年度は、国土交通省航空局による安全監査立入検査を受検しています。
ANA社によるコードシェア監査
弊社は、ANA社との間で共同運航(コードシェア)を実施しています。継続して共同運航を実施するためには、弊社の安全管理体制がIOSA(IATA Operational Safety Audit)基準と同等の安全品質を所持している航空会社であることが求められます。
IOSA基準の安全品質を所持していることを確認するため、ANA社より2年に1回、最新かつ有効な国際的な基準であるISARP's(IOSA Standards and Recommended Practice)を監査基準としてコードシェア監査を受審しています。2024年度は2022年度に続き、ANA社によるコードシェア監査を受審しました。
3-7 安全に関する社内啓発活動
弊社は、SMSをより有効で効果的なものにしていくため、社員の理解促進と意識向上に向けた種々の安全啓発活動を継続的に実施しています。
2024年度の活動内容
- 新年度安全ポスターの作成・掲示
安全方針、安全重点施策、安全指標・安全目標値を記載した社内掲示用ポスターを作成し、各職場に掲示しました。 - タービュランス セーフティ キャンペーン
社内安全講演会にて発表された「シートベルトの大切さについて」のビデオ視聴を全社員に促し、タービュランスに関する認識、手順の再確認、周知を図り、意識啓発を行いました。- 第1回 2024年9月26日~10月26日
- 第2回 2025年3月20日~ 4月20日

(ビデオ「シートベルトの大切さについて」)

(安全ポスター)
- ヒヤリハット投稿の強化
安全重点施策および安全指標・安全目標値の達成に向けて、各部門において未然防止活動の促進を図りました。 - 社内安全講演会の開催
例年、安全強化期間において社内外の講師による講演を実施しており、今年度もグループ会社である株式会社ソラシドエアと合同で実施しました。講師として、東京消防庁 警防部 安全対策担当課長 伊藤 彩子氏を招き、「災害現場における安全管理の取組〜我々の目指す安全とは〜」をテーマに講演をいただき、航空安全を追及するうえで心理的安全性の必要性と影響について理解を深めました。2024年10月18日に開催され、会場及び動画視聴含め135名が参加しました。また、アーカイブ配信において197名が視聴しました。
(安全講演会) - 安全情報誌「Safe DO」の発行
各部署からメンバーを選出し、社内外の安全への取り組み事例や事故事例、インシデントの紹介、安全に関する法令や方針の変更等、安全に関する情報を幅広く掲載する冊子を定期的に発行しています。今年度は記念すべき第100号を発行しました。
また、今年度もグループ会社であるソラシドエア社と共同でSafety⁺を発行し、社内イントラネットを通して全社員へ共有しました。
(安全情報誌) - 「機内緊急事態発生時の援助方法」出前講座の実施
緊急時に求められる最低限必要な知識を確認し理解を深めるため、全社員を対象に実施しました。「機内緊急事態発生時の援助方法」出前講座は21回実施し165名の社員が参加しました。
(出前講座) - 安全教育
SMSの浸透を図るため、要員に対する教育・訓練を実施し、組織内の安全文化の醸成を図りました。
初期安全教育(主に新入社員や出向者が受講)は191名が受講し、初期安全教育を受講してから翌年度以降、1年に一回実施する定期安全教育は753名が受講しました。 - 御巣鷹の尾根慰霊訪問
航空に携わる者として、事故の犠牲になられた方々を慰霊するとともに、事故の悲惨さ、安全運航の重要さを感じることで、社員の安全意識向上を図りました。
2024年度は5月、10月に慰霊訪問を実施し、44名の社員が参加しました。
(御巣鷹の尾根慰霊登山) - 安全巡回
年末年始の多客期に社長および安全統括管理者による職場巡回を行い、現場社員とコミュニケーションを図りました。
安全巡回は、羽田を含めた就航地空港の各基地を訪問し、合計で11回実施しました。
(安全巡回) - 安全研修
安全全般の理解を深めることを目的として、2024年度は慶應義塾大学 理工学部管理工学科/開放環境科学専攻/オープンシステムマネジメント専修 中西 美和教授を講師としてお招きし、「生産的安全の視点から安全文化情勢や安全管理」について講話をいただき、安全意識の向上を図りました。2025年3月12日に実施し、経営層・管理職層の37名が参加しました。
(安全研修)
3-8 安全文化の醸成
全社員を対象とした安全意識アンケートの実施(9月~10月)
社員の安全に関する意識レベル、階層・組織間における意識レベルを測ることを目的として行っています。
2024年度のアンケートからは、安全調査アンケートから安全意識アンケートと名称を変更し、ソラシドエア社と統一を図っており、引き続き、社員の安全に関する意識レベル、ならびに階層・組織間における意識レベルのギャップを測定し、今後の安全意識の向上および継続的改善に繋げていきます。
また、安全啓発イベントに経営層が積極的に参加することで、現業層との交流の場を積極的に図っていきます。
社員と経営層との対話活動
安全統括管理者が現場に出向き、社員と直接コミュニケーションを図る機会を設けています。2024年度は9月と2025年3月に開催し、現場の社員と積極的に意見交換を行い、安全意識の向上と安全文化の醸成を図りました。
| テーマ | 参加者数 | |
|---|---|---|
| 9月 | 「自部門の業務に係る課題と問題点」について | 22名 |
| 3月 | 「2024年度安全意識調査アンケート結果から見る自部門の課題と問題点」について | 13名 |

(安全統括管理者との安全対話)
安全表彰
安全に寄与した取り組みを表彰し、またその内容を社内に周知することで、安全活動の活性化ならびに社員の継続的な安全意識高揚ならびに向上を図ります。
- 安全行動指針の具体的行動化を積極的に進めた者
- 社内の安全意識を著しく向上させた者
- 安全運航維持や向上に日々貢献し、他の者の模範となった者
- その他、安全に関する取り組みで表彰に値する、または功労のあった者
表彰対象の項目である上記4件から、今年度は6件が表彰対象となりました。

4.使用機材および輸送実績
4-1 使用機材および輸送実績
使用機材情報
| 機種 | 機数(注1) | 座席数 | 平均年間飛行時間(注2) | 平均年間飛行回数(注2) | 導入開始時期 | 平均機齢 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ボーイング 767-300ER |
4 | 288 | 3,429:28 | 2,190.750 | 1998.03.27 | 21年08ヵ月 |
| ボーイング 737-700 |
8 | 144 | 3,040:57 | 1,849.125 | 2012.10.23 | 17年9ヵ月 |
弊社全体の平均機齢:19年02カ月
- (注1)
- 2025年3月31日時点での各型式の保有機数です。
- (注2)
- それぞれ年間の飛行時間と飛行回数を、各型式の年度末時点の保有機数で除した値です。
救急用具の装備状況
当社では航空法施行規則第 150 条に基づき、旅客の安全を確保するために、救命胴衣、救命ボート、非常信号灯、救急箱、医薬品、医療用具等を装備しています。
Emergency Locator Transmitter(航空機用救命無線機)、非常信号灯、救命胴衣、防水携帯灯、感染症予防具、救急箱、医薬品、医療用具等の緊急用具を装備しています。
機種別輸送実績(注1) ( )は前年度数値
| 機種 | 便数 | 座席キロ(注2) | 旅客キロ(注2) |
|---|---|---|---|
| ボーイング 767-300ER |
8,763 (8,617) | 2,312,777 (2,247,991) | 1,873,061 (1,752,819) |
| ボーイング 737-700 |
14,793 (15,101) | 2,125,273 (2,160,150) | 1,726,146 (1,693,561) |
| 合計 | 23,556 (23,718) | 4,438,049 (4,408,142) | 3,599,207 (3,446,380) |
路線別輸送実績(注1)
| 路線 | 便数 | 座席キロ(注2) | 旅客キロ(注2) |
|---|---|---|---|
| 羽田 ⇔ 札幌 | 9,047 | 1,952,668 | 1,579,597 |
| 羽田 ⇔ 旭川 | 2,179 | 600,801 | 480,656 |
| 羽田 ⇔ 函館 | 1,453 | 259,191 | 230,282 |
| 羽田 ⇔ 女満別 | 1,511 | 254,191 | 209,723 |
| 羽田 ⇔ 帯広 | 2,100 | 302,385 | 243,323 |
| 羽田 ⇔ 釧路 | 1,443 | 214,441 | 176,737 |
| 札幌 ⇔ 仙台 | 2,182 | 208,634 | 152,990 |
| 札幌 ⇔ 神戸 | 1,452 | 261,569 | 202,567 |
| 札幌 ⇔ 福岡 | 725 | 168,502 | 140,337 |
| 札幌 ⇔ 中部 | 728 | 113,638 | 96,727 |
| 函館 ⇔ 中部 | 730 | 100,915 | 85,473 |
| 札幌 ⇔ 札幌(遊覧飛行) | 1 | 62 | 57 |
| 羽田 ⇔ 羽田(遊覧飛行) | 1 | 81 | 56 |
| 札幌 ⇔ 熊本(チャーター便) | 4 | 970 | 682 |
| 合計 (注3) | 23,556 | 4,438,049 | 3,599,207 |
- (注1)
- 上記輸送実績には、ANAとのコードシェア運航に伴う座席販売分を含みます
- (注2)
- 座席キロ : 各飛行区間の提供座席数にその区間の距離を乗じたものです。
旅客キロ : 各飛行区間の有償旅客数にその区間の距離を乗じたものです。
(単位:千座席キロ・千旅客キロ) - (注3)
- 合計の値が、各路線の合計値と異なるのは四捨五入によるものです。
5.運航上のトラブル発生状況等
航空法第111条の4の規定に基づき、本邦航空運送事業者は、航空機の正常な運航に安全上の支障を及ぼす事態(事故、重大インシデント、その他の安全上のトラブル)を国に報告することが義務付けられています。
5-1 事故
弊社は、創業以来、航空事故(注)の発生はありません。
- (注)航空事故
- 航空法第76条、航空法施行規則第165条の2および第165条の3で定める、航空機の運航によって発生した人の死傷(重傷以上)、航空機の墜落、衝突または火災、航行中の航空機の損傷(その修理が大修理に該当するもの)などの事態が該当し、国土交通省が認定するもの。
5-2 重大インシデント
弊社は、創業以来、重大インシデント(注)の発生はありません。
- (注)重大インシデント
- 航空法第76条の2、航空法施行規則第166条の4に定める、航空事故には至らないものの、事故が発生するおそれがあったと認められるもので、航行中他の航空機との衝突又は接触のおそれがあったと認められた時、滑走路からの逸脱、非常脱出、機内における火災・煙の発生および気圧の異常な低下、異常な気象状態との遭遇などの事態が該当し、国土交通省が認定するもの。
5-3 安全上のトラブル(義務報告)
2024年度に弊社が国に報告した「安全上のトラブル」(注)は20件でした。いずれの事象も原因を分析し、必要な対応と再発防止策を実行しています。
発生した全ての「安全上のトラブル」に対して、担当部署において原因の調査分析を行い、必要な改善、対策を進め、再発防止に取り組んでいます。
- (注)安全上のトラブル(義務報告)
- 航空法第111条の4、航空法施行規則第221条の2第3号、第4号に定める、航空事故や重大インシデント以外の、その他の航空機の正常な運航に安全上の支障を及ぼす事態で、国土交通省への報告が義務付けられたもの。
これらのトラブルが積み重なった場合には事故を誘発することにもなりかねないものの、個々のトラブルは航空機の安全運航にほとんど影響がなく、直ちに航空事故につながるものではありません。
年度別の発生状況
| 年度 | 2022 | 2023 | 2024 |
|---|---|---|---|
| 発生件数 | 31 | 26 | 20 |
| 1万便当たりの発生件数 | 13.8 | 11.0 | 8.5 |

安全上のトラブル報告件数は20件で前年度より6件減少しました。前年度に比べ整備部門は6件減少、運航部門は3件減少、客室部門は増減なし、空港部門は3件増でした。

1万便当たりの報告件数は、各種施策を実施したことにより8.5件となり前年度(11.0件)から減少しました。
トラブル別の発生状況
| 報告内容 | 発生件数 | |
|---|---|---|
| 2023年度 | 2024年度 | |
| システムの不具合 | 5 | 2 |
| ・機材不具合又は航空機乗組員の以上により、管制機関に非常事態を宣言した事態 | (0) | (1) |
| ・発動機、プロペラ、回転翼及び補助動力装置が正常に機能しない状態となった事態 | (0) | (0) |
| ・機内放送が使用できないような機内放送装置の故障 | (0) | (2) |
| ・燃料搭載量の表示が喪失又は誤表示となる燃料油量計系統の故障 | (0) | (0) |
| ・抽出空気の漏洩を検知できない抽出空気漏洩感知システムの故障 | (0) | (0) |
| ・警報機能の機能喪失 | (5) | (1) |
| 非常用の装置の故障 | 3 | 2 |
| ・非常脱出口の故障 | (0) | (0) |
| ・非常用照明灯の一部不点灯 | (2) | (2) |
| ・非常用装置、非常用装備品の故障 | (1) | (0) |
| ・火災・煙の検知機能の喪失又は検知機能が低下するおそれがある警報装置の故障又は欠陥 | (0) | (0) |
| 規定値を超えた運航 | 3 | 0 |
| ・経路または高度からの著しい逸脱 | (1) | (0) |
| ・運用限界を超えた事態 | (2) | (0) |
| 機器からの指示による緊急の操作など | 4 | 4 |
| ・航空機衝突防止装置(TCAS)(注1)の回避指示に従った回避操作 | (4) | (4) |
| ・対地接近警報装置(GPWS)(注2)の警報に基づく回避操作 | (0) | (0) |
| ・離陸時に、臨界点速度(V1)付近又は臨界点速度(V1)を超えた速度で発生した安全を損なう又はそのおそれのある事態 | (0) | (0) |
| その他 | 11 | 12 |
| ・運用許容基準(MEL)の適用が不適切な状態で運航した事態 | (1) | (0) |
| ・着陸装置または脚格納室扉の不確実な展開または引込 | (0) | (2) |
| ・機体及び装備品等の整備間隔又は装備品等の限界使用時間(Life Limited Partsの時間限界)を超えて運航した事態 | (5) | (0) |
| ・運航管理者が資格要件等を満足しない状態又は業務に従事する時間等の制限を超えた状態で飛行計画を承認した事態 | (1) | (0) |
| ・運送不可物品の輸送 | (2) | (1) |
| ・航空機の構造の損傷 | (0) | (1) |
| ・操縦室風防の着水や亀裂等により、航空機乗組員の視界が大きく妨げられた事態 | (0) | (1) |
| ・主要な装備品について、必要な証明書が添付されていることを確認せずに装備した事態 | (0) | (0) |
| ・事実と異なる内容によって、出発前の確認を行った事態 | (0) | (5) |
| ・事実と異なる整備内容によって、整備の確認又は航空機基準適合証の発行を行った事態 | (0) | (1) |
| ・耐空性改善通報の整備作業要求等によらず運航した事態 | (0) | (0) |
| ・装備品または部品の誤った取付け | (2) | (0) |
| ・航空機構成部品が外れた事態 | (0) | (0) |
| ・フラップ又はスラット等の非対称な作動 | (0) | (0) |
| ・主操縦系統又は関連タブ及びロックシステムにおける動作の制限、固着、鈍い反応又は反応の遅れ | (0) | (0) |
| ・逆推力の不作動又は意図しない作動 | (0) | (0) |
| ・推力又は回転数の制御不能 | (0) | (0) |
| ・機体部品の一部脱落 | (0) | (1) |
| 総件数 | 26 | 20 |
(注)カッコは内訳
安全上のトラブルの概要
2024年度、安全上のトラブルについて事例別の概要は以下のとおりです。
【システムの不具合】
2件発生しましたが、原因となった部品の整備処置及び機能確認を実施しました。
同事象については引き続き発生状況をモニターしていきます。
【非常用の装置の故障】
2件発生しましたが、原因となった部品の交換等の整備処置および機能確認を実施しました。同事象については引き続き発生状況をモニターしていきます。
【規定値を超えた運航】
2024年度は規定値を超えた運航はありませんでした。
【機器からの指示による緊急の操作など】
4件発生しましたが、いずれも航空機衝突防止装置(TCAS)(注1)による事象であり、速やかに機材点検を実施し、機材に異常がないことを確認しています。
【その他】
その他報告は12件ありました。飛行上の重量と重心位置の不一致を含め、事実と異なる内容によって出発前の確認を行った事態が5件ありました。機体の部品交換・点検実施期日の超過について、昨年度は5件ありましたが、2024年度は0件でした。
安全上のトラブルの実績
【ヒューマンエラーに起因する安全上のトラブル報告件数(航空局届出指標)】
- (注1)航空機衝突防止装置(TCAS)
- 自機の周辺に他機が存在することを運航乗務員に知らせ、かつ回避操作を自動的に指示するものです。通常の管制指示による運航の場合でも、他機との位置関係等により作動することがあります。
- (注2)対地接近警報装置(GPWS)
- 航空機が地表や海面に接近した場合に運航乗務員に警報を発する装置ですが、危険がない場合でも地形等により作動することがあります。これらは、機器の指示に従って運航乗務員が適切な操作を行うことにより、安全上の問題が生じない設計となっており、いずれのケースでも、機器の指示に従った適切な操作が行われています。
【具体例】
航空機Aが高度31,000フィートを巡航中、航空機Bが30,000フィートで水平飛行に移行する予定で上昇していく状況において、TCAS装置は、航空機Bが水平飛行に移る予定であることまでは認識できないために、航空機Bがそのまま上昇を続けて航空機AとBが接近してしまう可能性を排除するため、安全上指示を行います。
| 年度 | 2022 | 2023 | 2024 |
|---|---|---|---|
| 目標値 | 5.54 | 4.54 | 4.08 |
| 実績値 | 4.88 | 4.22 | 2.12 |
ヒューマンエラーに起因する報告件数は5件ありました。内訳は整備部門が1件、運航部門が0件、空港部門が4件です。

1万便当たりのヒューマンエラー件数は2.12件で、過去3年間で最少となりました。
【発生から90日以内の最終再発防止策提出達成率(社内指標)】
| 年度 | 2022 | 2023 | 2024 |
|---|---|---|---|
| 目標値 | 80% | 80% | 85% |
| 実績値 | 93.8% | 91.6% | 91.0% |
安全上のトラブルに対する要因分析、対策立案を可能な限り速やかに実施することは早期の未然防止・再発防止に繋がり、安全性の向上に重要なことから、全社で取り組みを強化しています。

90日以内の報告完了率は、89%(20件中18件完了)となり、目標(85%以上)を達成しました。昨年度(92%)から3ポイント減少しましたが目標値を上回っており、高水準を維持しています。
機種別の発生状況
型式ごとで発生した、安全上のトラブル報告件数はボーイング767が5件、ボーイング737が15件でした。ボーイング767では点検システム不具合等、非常用装置の故障等はなく、ボーイング737は、飛行上の重量と重心位置の不一致等事実と異なる内容によって、出発前の確認を行った事態が多くを占めました。
5-4 イレギュラー運航(航空局基準)
2024年度のイレギュラー運航(注)の発生は6件でした。発生した事象に対しては原因究明を行い、整備処置や情報の周知等、必要な対応を実施しました。
| 年度 | 2022 | 2023 | 2024 |
|---|---|---|---|
| ボーイング767-300 | 1 | 2 | 2 |
| ボーイング737-700 | 0 | 5 | 4 |
| 合計 | 1 | 7 | 6 |
(注) イレギュラー運航
イレギュラー運航とは、航空機の多重化されたシステムの一部のみの不具合が発生した場合に乗員がマニュアルに従い措置したうえで万全を期して引き返しなどを行った結果、目的地などの予定が変更されたものなどを指します。一般的には運航の安全に直ちに影響を及ぼすような異常事態ではありません。
具体的には、次のような場合が、イレギュラー運航に該当します(ただし、航空事故又は重大インシデントに該当する場合を除きます)。
- 離陸後に目的地を変更した場合(機材の不具合等によるものに限ります。)
- 出発地に引き返した場合(機材の不具合等によるものに限ります。)
- 航空交通管制上の優先権を必要とする旨を通報した場合(機材の不具合等によるものに限ります。)
- 航空機が他の航空機又は物件と接触した場合
- 航空機が滑走路から逸脱した場合
- 滑走路を閉鎖する必要があるような運航があった場合(滑走路点検のために閉鎖するものを除きます。)
事象の概要は、国土交通省のホームページ内(航空安全に関する統計、報告等)にも掲載されています。
https://www.mlit.go.jp/koku/15_bf_000191.html
6.2024年度および2025年度の安全指標・安全目標値
6-1 国からの命令・指導等
2024年度、弊社が国土交通省から受けた行政処分、行政指導等はありませんでした。
6-2 2024年度 安全指標・安全目標値・実績
安全指標および安全目標値の実績は以下のとおり、全ての目標を達成しました。
| 安全指標 | 目標値 | 実績 | |
|---|---|---|---|
| ① | 事故・重大インシデント | 0件 | 0件 |
| ② | アルコール検査での検知・失念 | 0件 | 0件 |
| ③ | ヒューマンエラーに起因する安全上のトラブル報告件数(委託先を含む) | 4.08件/1万便 | 2.12件/1万便 |
6-3 2025年度 安全指標・安全目標値
安全指標および安全目標値を以下のとおり設定しました。
| 安全指標 | 目標値 | |
|---|---|---|
| ① | 事故・重大インシデント | 0件 |
| ② | アルコール検査での検知・失念 | 0件 |
| ③ | ヒューマンエラーに起因する安全上のトラブル報告件数(委託先を含む) | 1.40件/1万便 |
事故・重大インシデント0件」については、航空会社の最大の使命として、引き続き安全指標・安全目標値に定めます。「アルコール検査での検知・失念」については、前年度0件を達成しましたが、本事案を発生させないよう高い意識をもって0件を目指します。
また、「ヒューマンエラーに起因する安全上のトラブル報告件数(委託先を含む)
1.40件/1万便」を掲げます。なお、2024年10月より整備部門がRPWへ機能集約したことから、整備部門を除いた部門(運航部門、空港部門、客室部門)で設定しています。
2024年度 安全報告書
株式会社AIRDO
編集:安全推進室 安全推進部

マイページ