土と人、農の旅

土と人、農の旅

2026.10.21

農業に親しむ十勝トリップ

北海道東部に位置する十勝エリアは、日本有数の大規模かつ先進的な農業地帯。広大な農地の中で、生産者たちはどのような思いで自らの農業を手掛けているのか。農業体験やファームイン、ファームレストランを通じて、農業に親しむ十勝トリップへ。
大スケールの牧場や農地をめぐり、今を生きる農業人たちの思いやスタイルを伺った。

※価格はすべて税込です。
※機内誌rapora 2024年6月号に記載された内容を一部改変し掲載しています。おでかけの際は公式サイトで最新情報をご確認ください。

「牛と人を幸せにする牧場」でファームイン

北海道十勝エリアの南に位置する大樹町で酪農業を営む〈坂根牧場〉の4代目・坂根遼太さんは、アメリカの農業研修で酪農のイメージが一変した。
帰国後、就農して目指したのは、面白いこと、楽しいことを生み出す酪農だった。

坂根遼太さんは、高校卒業後、1年半ニュージーランドへ語学留学。その後、JAEC(国際農業者交流協会)のプログラムを利用し、2年間アメリカで農業研修を受けた。「当時は家業を継ぐ気は一切なく、とにかくアメリカへ行きたいという思いで海を渡りました。そこで目の当たりにしたのは、日本で見てきた酪農のイメージとは全く違う世界。ボスとワーカーの役割が明確に分かれ、会社組織として機能し、楽しみながら酪農に携わっている姿を魅力的に感じました」

▲ 「健康な牛がいれば、働く人のストレスも減らせる」という坂根さんの思いは「農業ってかっこいい!」
▲アニマルウェルフェアを取得した環境でのびのびと暮らす牛たちは、牛舎から放牧地へ自由に移動できる

坂根さんは酪農を学んできた奥さんとアメリカ在留中に出会い、実家が行っている放牧酪農の価値に気づかされた。「カフェをやりたいという彼女の夢をうちの牧場で実現しようと、家業を継ぐことを決意。やり方を変えれば、酪農でも面白いことができると考えました」
坂根さんが掲げる経営理念は「牛と人を幸せにする牧場」。オリジナルのパーカーには「Happy Cows, Happy People」の文字がプリントされている。「働く人も、牧場に来る人も、牛乳を飲む人も、自分も、いろんな人を幸せにしたい。そのためには、健康な牛を育てることが大切なんです」

▲土づくりにこだわり、土地に過剰な負担をかけることなく、環境に優しい酪農を営むことを大切にしている

坂根牧場は、世界的に広がる「アニマルウェルフェア(家畜福祉)畜産認証」を取得し、できる限りストレスが少なく、牛たちが健康的に暮らせる飼育を実践している。「牛を育てるには、おいしい草が不可欠。だから土づくりには力を入れています。


土を分析して、足りないものを入れてバランスを整えると、あとは勝手に微生物たちが行動してくれて、そこから伸びてきたおいしい草を牛たちが食べる。僕たちは、その微調整をやっているだけなんです」

▲1階にチーズ工房、2階に〈ファームホテルon the cheese〉を備えたウッディな牧場の拠点

牛乳とチーズのブランド「乳life」や放牧牛肉ブランド「草乃牛」には、従来にはない「楽しむ酪農をしよう」という思いが込められている。2023年にはチーズ工房の2階で〈ファームホテル on the cheese〉を始めた。「酪農家もしっかり休んで、楽しく生きることが大切。年に何回かは旅行に行きたいし、その間は人を雇っています。うちには新規就農したい人やアメリカへ行く前の事前実習で働きに来る若い人が多く、そういう人たちが育っていくのがうれしいし、いろんな出会いがある面白さがありますね」。人が好き、だから牛を大切にするという坂根さん。この牧場から、もっと楽しいこと、新しいことが生まれていきそうだ。

▲牧場の様子を眺めてくつろげる〈ファームホテルon the cheese〉は長期滞在することもできる
▲新鮮な牛乳からつくられるフレッシュチーズは、塩分控えめ、生乳本来の味わいが楽しめる

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坂根牧場
SAKANE FARM

土地に過剰な負担をかけることなく、環境に優しい酪農を営む牧場。〈ファームホテル on the cheese〉に宿泊し、牧場見学や搾乳体験ができる。「乳life」の乳製品や「草乃牛」の牛肉製品はオンラインでも購入できる。

住所:広尾郡大樹町字大樹396-5
TEL:01558-6-5622
公式サイト:https://sakanefarm.com/

「カンノンサウナ」のある農場で、農業のイマに触れる

1917(大正6)年に入植した〈十勝とやま農場〉の4代目・外山隆祥さんは、地域ではいち早くスマート農業に取り組み、サウナやゲストハウスを開設して、さまざまな人たちとの交流を楽しんでいる。開かれた農場を営む思いを伺った。

▲広大な畑の向こうに観音様が横たわっているように見える十勝観音=日高山脈は、とやま農場のシンボリックビュー

外山さんは、北海道立農業大学校を卒業して2009年に就農し、約36ヘクタールの畑で小麦、大豆、小豆、じゃがいもなどを生産している。「土壌分析の数値をもとに、化学肥料や有機肥料を使い分け、バランスのいい健康な土づくりを大切にしています。土や土地は僕たちの資源、全ての基本になるのです」
外山さんは2011年からスマート農業に取り組み、GPSトラクターや農薬などを散布するドローンなどを活用して生産活動を行っている。「先代の父が亡くなり、技術が伝承されずに就農したため、それを補うためにICTを導入しました。年々周囲の農場の作業も請け負うようになり、地域の農業に貢献できるかなと思っています。また、作業が簡略化できるため、妻でもトラクターの操作が可能に。昔は匠の方が長年の勘で行っていたことも、AIなど先進技術がカバーしてくれるのです」

▲ トラックをリメイクしたカンノンサウナで汗を流し、約36ヘクタールの畑の中でととのう快感は超絶!
▲道産カラマツ材を使ったゆったり広めのフィンランド式サウナは、8種類のアロマオイルから選んでセルフロウリュウが楽しめる

とやま農場では、父が残した中古のキャンピングトレーラーを改装し、〈ゲストハウスRoute55〉をDIYでつくり、2016年から宿泊営業を開始。2018年には作業小屋を改装して〈ファームインBiei〉を増設し、2棟体制で運営している。「2019年頃は、国内はもとより多くの外国人が訪れ大盛況に。ところがコロナ禍でピタッと止まってしまい、世の中のトレンドを鑑みながら『サウナをやろう!』と決めました」
構想したのは1970年代に農場で活躍したトラックを改装したサウナづくり。クラウドファンディングで資金を集め、2022年に完成した。「農場から見える日高山脈の山並みは、横たわる観音様に見えるため"十勝観音"と呼んでいて、その恩恵に感謝を込めて『カンノンサウナ』と名付けました。皆さん、何もない誰もいない約36ヘクタールの外気浴ゾーン(笑)や、天気がいい夜の星空に感動するようです」

▲キッチンとシャワーのあるサウナ休憩棟の外観
▲〈ファームインBiei〉は大人4人まで宿泊でき、ベッドルーム、ダイニングキッチン、風呂、トイレを完備している

とやま農場の敷地内には2023年にパン屋さん〈ベーカリー シュマン〉がオープンし、今後は地域の農家とのコラボも構想している。「自分たちだけじゃなく、誰かとコラボすることでやれることは増えていくのかなと思います。求めているのは、経済ベースの仲間づくり。僕たちが面白そうだなとやっていることに、何かやってるなとゆるい感じで入ってきてほしいですね」。外山さんは、農業と向き合いながら、持続可能な地域の明日を思い描いている。

▲農場で栽培する小豆きたろまんと白小豆きたほたるを使用した「冷やしあずき紅白」はスッキリした甘さが美味

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十勝とやま農場
TOKACHI TOYAMA FARM

健康な土が健康な作物をつくり、環境や人にも優しい食糧生産が基本と考え、実践する農場。サウナやゲストハウスのほか、農業体験もでき、外山さんたちと気兼ねなく交流が楽しめる。

住所:帯広市美栄町西6線128番地
TEL:0155-60-2110
公式サイト:https://www.toyama-nojo.net/
宿泊予約はAirbnbから「カンノンサウナ」「ファームインBiei」で検索 https://www.airbnb.jp/

農場の味を、いただきます!

農場や牧場が経営するファームレストランは、農業王国・十勝を旅するなら訪れたいスポット。とびきりの鮮度、ここだけの味わいを、のんびりとしたロケーションの中で楽しもう!

素材が違う、鮮度が違う。野菜がメインになる味わい。

▲レベリオントマトをベースに、キャベツ、ベビーリーフ、大根、ニンジン、枝豆など野菜がたっぷり。オムキーマカレー(スープ付)1210円

中札内村の〈ファームレストラン野島さんち〉は、農場を営む野島利美さんが2010年に始めたレストラン。調理は娘の早希さんが担当し、中札内産の野菜をふんだんに使った料理を提供している。「やっぱり父が育てた野菜や地元農家の野菜をたっぷり食べられるのが、うちの料理の特徴ですね」
利美さんが生産している野菜は、キャベツ、カボチャ、トマト、キュウリ、ナス、ビーツなど。近年はワイン用のブドウも生産し、帯広のワイナリーでワインを製造しているという。「もともとキャベツをメインにつくっていて、メニューもキャベツを生かす料理という発想からスタートしました。冬は越冬用の甘みが強い品種、春〜夏はグリーンボールという丸玉の葉が肉厚でやわらかい品種、秋はサワー系のサラダ向きの品種と、キャベツは季節ごとに違う味わいが楽しめます」

野島さんちの料理を食べてみると、肉やカレーに負けない野菜のおいしさがガツンとくる。やはり十勝の野菜はうまい!と確信した。「野菜がおいしいと言われるのがいちばんうれしいですね。とれたての野菜の味は違いますか?とよく聞かれるけど、スーパーなどで市販 of 野菜をあまり買うことがないのでわからなくて...。お客さまの反応を聞くと、やっぱり違うんでしょうね」と早希さん。野菜がメインになる味わいが、ここにある。彩り豊かな夏野菜の季節が、そろそろ始まる。

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ファームレストラン野島さんち
Farm Restaurant Nojimasanchi

中札内村の田園風景の中に佇む、ログハウス風のファームレストラン。大きな窓から畑を眺めながら、野菜本来の味わいを生かした料理が楽しめる。とかち帯広空港から車で約10分、空港から直行するのがオススメだ。

住所:河西郡中札内村新生東1線199-4
TEL:0155-67-2880
営業時間:ランチ11:00〜14:00(L.O.)/カフェ14:30〜16:30(L.O.)
定休日:木曜日(不定休)※月に数回連休があるためSNSをご確認ください。
公式サイト:https://twitter.com/nojimasanchi314

人と牛と環境に優しい牧場でとびきりのブランド肉を満喫

▲さまざまな部位を食べやすいサイズにカットしたステーキは、やわらかく雑味のない味わいが美味。コロコロステーキプレート(パンまたはライス・デザート・コーヒー付)1800円

〈COWCOW Village〉は、芽室町の〈大野ファーム〉が開設したレストラン&カフェ。「当牧場では、35の牛舎で約4000頭の牛を飼育し、人と牛と環境に優しい飼育環境の中、農場内で生産した牧草と麦わらを与え、遺伝子組み換え作物の混入を防ぎ、成長を促進させる抗生物質は無添加。健康で安心・安全な牛づくりに取り組んでいます」と大野ファームの中駄舞衣さんは言う。
大野ファームで生産される「未来とかち牛」「未来めむろ牛」は全国に出荷され、ブランド牛として知られている。道内では流通が限られ、COWCOW Villageでは希少なおいしさを味わうことができる。「お肉はとてもやわらかく、牛肉特有の臭みがなく、やさしい甘みが広がります。当店のステーキは塩コショウのみの味付けとなっていますが、それだけでおいしく味わえる牛肉となっています」

店内の大きな窓から小麦畑が見え、遠くに日高山脈が見える。雄大な十勝の風景は、このお店の味わいの一つだ。「COWCOW Villageは『生産者と消費者の方々をつなぐ場所にしたい』という思いから生まれました。景観とデザインにこだわり、落ち着いた雰囲気の中、美しい景色を眺めながらお食事をお楽しみいただけます」。十勝晴れの光が差し込む心地いい店内で、とびきりの牛肉料理と十勝産ミルクを使ったスイーツのおいしさを満喫しよう。

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大野ファーム COWCOW Village
OONO FARM COWCOW Village

「畜産農家を身近に感じてもらい、気軽に足を運んでもらえる牧場にしたい」という思いから2014年にオープン。農場がこだわって育てた安全で安心な牛肉や小麦、馬鈴薯、地域の新鮮な野菜を使った味わいが楽しめる。

住所:河西郡芽室町祥栄北8-23 大野ファーム内
TEL:0155-62-4159
営業時間:ランチ11:00~14:00/カフェ14:00~16:00 (15:30 L.O.)
定休日:月曜日・火曜日(祝日の場合は翌日休み)他不定休あり
公式サイト:https://oonofarm.jp/cafe/

photo: Natsumi Chiba

text: Katsuaki Takasaki

そのほかの地域でもファームトリップ!泊まる、体験する、農場の宿

早朝に起きてもぎたての野菜を食べる、満天の星の下で眠りにつく。ココロもカラダもリフレッシュする、そんな道内各地の「農泊」スポットをピックアップ!

1.女満別空港/北海道のまん中・旭川空港

農家民宿えづらファーム
Farm Stay Ezura farm

◎遠軽町

360度広大な畑に囲まれた、1日1組貸し切りのコテージ。全ての窓から一面に広がる農場の畑を眺められ、その景色は壮観だ。黄金色の小麦畑や満開に咲いたジャガイモ畑など季節によって表情を変える畑を歩き、収穫したとれたての野菜を使った料理を楽しめる畑ツアーも体験できる。ここをきっかけに移住した人もいるそう。2022年にはレストランが開店。「農・食・人」がより親密になれるファームだ。

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住所:紋別郡遠軽町白滝北支湧別152-3
TEL:0158-48-2050
公式サイト:https://www.ezurafarm.com/

2.北海道のまん中・旭川空港

ファームイントント
Farm Inn Tonto

◎美深町

村上春樹著『羊をめぐる冒険』の舞台ではないかといわれている美深町。その地で放牧された羊を眺めながらのんびりとした時間を過ごせるのがこのお宿だ。コテージは白樺林に囲まれており、キツネや鹿、冬にはオオワシを目にすることも。農場の羊肉はラムとマトンの中間の味わいを楽しめる希少な「ホゲット」。ジンギスカンのほか昨年から始まったフレンチのコースでも堪能できる。

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住所:中川郡美深町仁宇布437-3
TEL:01656-2-3939
公式サイト:http://matsuyama-farm.com/?page_id=24

3.たんちょう釧路空港

ファームイントーチ
Farm inn Torch

◎鶴居村

どさんこ馬との触れ合いが楽しめる、丘と小川に囲まれた馬宿。1棟貸し切りのコテージの前には放牧地が広がり、窓から草を食む馬を眺められる。夜には満天の星が輝き、薪ストーブの前でゆったりとした時間を楽しめるのも農泊ならでは。鶴居村産チーズのラクレットプレートなどの地元食材を堪能するプランもあるが、釧路の市場で買ってきた海産物をキッチンで調理するのも楽しいひとときだ。

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住所:阿寒郡鶴居村字雪裡原野北26線西13-3
TEL:0154-64-2595
公式サイト:http://torch-s.jp/

4.新千歳空港

Kitchen Garden 及川農園
Kitchen Garden Oikawa Farm

◎蘭越町

蝦夷富士とも呼ばれる羊蹄山を、コテージから一望する贅沢。グリーンシーズンはウッドデッキでニセコ山系を眺めつつ食事をすることも可能だ。収穫体験ツアーではアスパラ、とうもろこしなど季節ごとの野菜を収穫。農園のとれたて野菜をふんだんに使った農家飯が人気で、時には知り合いの漁師から海産物を仕入れて提供することも。山と海が近い蘭越町ならではの農泊が楽しめる宿だ。

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住所: 磯谷郡蘭越町富岡96-3
公式サイト:https://kitchengardenjp.com/
宿泊予約は専用フォームから https://www.airbnb.jp/rooms/38467565?source_impression_id=p3_1696556571_q0faHp45OlepQQFQ

5.函館空港

松田農園
MATSUDA FARM

◎北斗市

北海道水田発祥の地といわれる北斗市で創業90年以上の歴史を持つ松田農園が、2020年から農泊をスタート。田んぼや畑に囲まれた静かな環境で、朝もぎのとうもろこしやアップルベリー(ミニトマト)など、収穫しながら食べるおいしさはとびきりの体験だ。四季折々の農業体験やアクティビティも楽しめる。何もしない時間にひたるもよし、函館観光名所に赴くもよし。いろいろな旅を楽しみたい人にはぴったりだ。

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住所:北斗市細入44
TEL:080-4040-0538
公式サイト:https://www.farm-matsuda.com/

text: Chie Tsushima

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