帯広の街でスロートリップ

帯広の街でスロートリップ

2026.10.9

広い北海道の中でも、独自の文化が息づく街・帯広。
十勝平野の中心に位置する広々とした地に立つと、ほかの都市にはないのびのびとした空気を感じる。この街を楽しむなら、スローな速度でゆったりと。

「馬車BAR」と「ばんえい競馬」馬と親しむ2つのストーリーを楽しもう。
日が暮れたら、帯広だけの夜が始まる。

※価格はすべて税込です。
※機内誌rapora 2024年12月号に記載された内容を一部改変し掲載しています。おでかけの際は公式サイトで最新情報をご確認ください。

夜のさんぽを、馬車BARで

帯広の夜には、この街にしかない風景がある。馬が引き、繁華街をゆっくり進む「馬車BAR」。ビールを飲みながら、馬車に揺られて夜さんぽ。世界で唯一のナイトトリップを体験した。

「馬車BAR」がスタートしたのは2019年。馬車BARの運営を担当する永田剛さんが「ばんえい競馬で活躍した馬が、観光客を乗せた馬車を引く」というアイデアを発案し、街の中心部にある〈ホテルヌプカ〉に提案して実現した。引き馬は12歳のオス馬コマちゃんことムサシコマ。2018年までばんえい十勝の現役競走馬として〈帯広競馬場〉で走っていたという。

▲コマちゃんが引く馬車の重さは約3トン。満員になると4トンほどの重さを引いて歩く、さすがばん馬パワー!
▲「旅のはじまりのビール」は、ホテルヌプカ開業の際に誕生したピルスナータイプのクラフトビール。十勝産のおつまみがうれしい!

馬車は、宮内庁の馬車修復も手がける家具工房と十勝の職人集団の共同製作。ワインレッドのクラシカルな2階建て車両が街中に映える。
「皆さん、コマちゃんの頭を『いい子、いい子』となでてからお乗りください」と永田さんが案内し、乗客は触ったり撮影したりして乗車。スタッフにより飲み物が配られ、「おつまみは、足寄町『しあわせチーズ工房』のナチュラルチーズと中札内村産の枝豆。ホテルヌプカオリジナルの『旅のはじまりのビール』は、十勝の畑で育った大麦100%でおいしいと評判です」と紹介された。
「それでは出発しまーす!...あっ!差し入れだ!」。馬車は動き出したと思った途端に急停車。近所のお店の方からコマちゃんにニンジンの差し入れがあったらしい。「老舗の女将さんがいつも差し入れてくれるんです。本当にありがたいですね」

▲馬車BAR2階席からの風景。道行く人たちが親しげに手を振ってくれる
▲コマちゃんは体高170センチ、体重約1トン。性格はとても穏やかで、大人しくなでなでさせてくれる

程なくして馬車は再び動き出した。パッカ、パッカ...アスファルトに響く蹄の音が心地いい。人間が歩くくらいの速度だろうか。街を眺めながらビールを飲むのにちょうどいいスピードだ。道行く人が、マンションの住人が馬車に向かって手を振り、乗客も笑顔で振り返す。地元の人たちとちょっとだけ交流ができ、なんだかうれしい気持ちになる。「馬車は乗り物ではありますが、街の人たちと触れ合えるのがいちばんの魅力。今では地域の人たちは『私たちの街の馬だよね』と捉えています」と永田さん。

▲馬車BARツアーでは途中休憩タイムがあり、乗客はコマちゃんにニンジンをあげたり、記念写真を撮ったりして和む
▲馬車BARはホテルヌプカを発着地点に、約2キロのコースを50分ほどで巡る。夜の街にコマちゃんの蹄の音が心地よく響く

「コマちゃんに会いたい」と遠くから訪れる人がいる。飲みに行く前のゼロ次会として楽しむ地元の人がいる。出張で訪れた取引相手と接待前に乗る社長さんがいる。コマちゃんと馬車BARと人々の笑顔は、この街の日常の風景になっている。

<DATA>
馬車BAR
BASHA BAR

住所:帯広市西2条南10丁目20-3 ホテルヌプカ前発着
TEL:0155-20-2600
時間:月曜・火曜・金曜・土曜
12月1日~1月4日 ①18:00〜②19:00〜
※1月中旬~2月下旬は馬ソリプログラムを実施。3月から通常営業を再開
料金:3300円(ワンドリンク・おつまみ付)
公式サイト:https://bashabar.com/

旅と街をデザインする〈ホテルヌプカ〉の楽しみ方

帯広の市街地にある〈ホテルヌプカ〉と〈ヌプカハナレ〉は、「泊まるだけではない、人が集うホテル」スタイルを展開している。街に、文化を生み出す拠点を。十勝を愛する思いから、物語は始まった。

馬車BARの発着点となっているホテルヌプカは、2016年に開業したリノベーションホテル。東京で飲食店を営んでいた坂口琴美さんと弁護士を務める柏尾哲哉さん、十勝出身の2人が共同代表として〈十勝シティデザイン㈱〉を立ち上げ、廃業したホテルを改築して誕生した。

「ドーナツ化現象が進み、帯広の市街地に人が少なくなっていると感じていました。人がいないと文化が生まれなくなる、引き継がれる文化が途絶えてしまう。面白い人が集まる拠点をつくりたかったのです」と坂口さんは言う。ホテルヌプカは、街をアクティブに過ごすためのコンパクトなゲストルームを。2021年に開業したヌプカハナレは、ワーケーションや家族・カップルでも利用できるルーム設定。「カフェに泊まるような感覚で、面白い人たちが日常的に伝え合える空間。普通のホテルのフレームを崩したかったんです」ここでは音楽イベントや映画祭、地元の食材を集めたマルシェなどが開かれ、ここを目指してさまざまな人が集う。「クリエイティブ系など、こういう場所を好きな人が自然と渦巻いている感じ。人が面白ければ、街は変わっていくと思っています」

ヌプカがオススメする絶対行きたい十勝スポット

十勝を愛するホテルヌプカの総支配人・坂口さんに聞きました。地元民だからわかる、いい感じのオススメ十勝スポットを紹介します!

Hiroyuki Mochida Horsemanship

「ナチュラルホースマンシップ」の理論に基づいた調教を行い、乗馬やグラウンドワークなど、より深く馬との関わりを学べる施設です。

住所:帯広市富士町西6線58-13
TEL:0155-63-7676
公式サイト:https://www.hmhhorsemanship.com/

EZO LEATHER WORKS

猟師をしている店主が捕獲したエゾシカ革を活用して革製品を製作・販売。店主は山にいることも多いため訪問の際は問い合わせが必要です。

住所:中川郡池田町字清見163-12(ショップ)
TEL:015-578-7256
公式サイト:https://ezoleatherworks.com/

タカノビールスタンド

昭和初期の復刻「円筒氷冷式スイングカランビールサーバー」を使用。注ぎ手で味が変わる、ビールの新体験が満喫できます!

住所:帯広市西2条南10丁目20番地4
公式サイト:https://www.instagram.com/takanobeerstand/

しあわせチーズ工房

足寄町〈ありがとう牧場〉の放牧牛の生乳から作るしあわせチーズは、「Japan Cheese Awards」金賞に輝いた日本随一の味わいです。

住所:足寄郡足寄町茂喜登牛141-4
TEL:0156-26-2585
公式サイト:https://www.shiawasecheese.com/

糠平(ぬかびら)温泉 中村屋

手作り感のあるしつらえやおもてなしがセンス抜群。混浴露天風呂では、「星釦(ほしぼたん)」を押すと照明が消え、満天の星を満喫できます。

住所:河東郡上士幌町字ぬかびら源泉郷南区
TEL:01564-4-2311
公式サイト:https://nukabira-nakamuraya.com/

三国峠

北海道の国道の中で一番標高の高い三国峠(標高1139m)は、夏の緑深い大樹海、秋の紅葉が絶景。緑深橋からの眺めが最高です。

住所:河東郡上士幌町三股番外地
公式サイト:https://www.kamishihoro.jp/page/00000140
(上士幌町観光協会)

toi

自然栽培・有機栽培小麦のみを自家製粉し、自家製のパン種と薪窯を使って焼いたパンは実に美味。足を延ばして行ってほしいお店です。

住所:河東郡音更(おとふけ)町字上然別北6線23-4
TEL:0155-32-9177
公式サイト:https://toi-naturel.amebaownd.com/

ますやパン麦音

十勝産小麦100%の焼きたてパンが約100種類。単独ベーカリーでは敷地面積日本一の庭でイベントやピクニックが楽しめます。

住所:帯広市稲田町南8線西16-43
TEL:0155-67-4659
公式サイト:https://www.masuyapan.com/shop/

六花の森

10万平方メートルの広大な地に、六花亭の花柄包装紙に描かれた草花がいっぱい。アートとの共存が素晴らしいガーデンです。

住所:河西郡中札内村常盤西3線249-6
TEL:0155-63-1000
公式サイト:https://www.rokkatei.co.jp/facilities/六花の森-2

ホテルヌプカ

HOTEL NUPKA

<DATA>

住所:帯広市西2条南10丁目20-3
TEL:0155-20-2600
公式サイト:https://www.nupka.jp/hotel-nupka/

ヌプカハナレ

NUPKA Hanare

<DATA>

住所:帯広市西1条南10丁目18
TEL:0155-20-2600
公式サイト:https://www.nupka.jp/nupka-hanare/

馬たちの激戦ライブ〈ばんえい十勝〉へ

馬たちが鉄ソリを引いて力とスピードを競う、世界で唯一のばんえい競馬。砂を蹴り、坂を駆け上がる、迫力レースの醍醐味を体験しようと、現在ただひとつ開催が行われている帯広競馬場へ行ってみた。

明治時代、北海道の開拓において重い荷を引き、農耕や木材運搬などを支えた馬たちは「ばん馬」と呼ばれた。ばん馬を競わせるばんえい競走は、北海道で厳しい生活を営む農民の娯楽として誕生。地方競馬法の施行に伴い1947(昭和22)年にばんえい競馬がスタートした。「ばんえい競馬は、重さ1トンもある馬がソリを引いて競う世界で唯一の公営競技。以前は旭川・北見・岩見沢・帯広の4市で行われていましたが、2007年から帯広のみで開催しています」と、ばんえい十勝広報担当の中村香代子さん。

▲パドックからスタートゲートへ向かう馬たち。「元気よく歩き、落ち着いている」馬の見極めがポイント
▲スタート直前のゲートの様子。激戦前の緊張感が漂っている

コースは、直線200メートルのセパレートコース。途中に大小2つの障害が設けられ、最大1トンもの鉄ソリを引いた馬たちが坂を越えることがレースのポイントとなる。「ばんえい競馬独自のルールにより、第1障害と第2障害の間で馬を止めることが認められています。騎手の采配によりスタミナを温存したり、呼吸を整えるなどの駆け引きが行われ、そこで騎手の展開力が試されるのです」もう一つのルールの特徴は、ゴールはソリの後端が通過した時点。農耕馬として北海道開拓を支えた歴史を受け継ぎ、荷物を届けきった先がゴールと設定されたというわけだ。
「ゴールライン直前の逆転劇が多く、最後まで目が離せません。また、スタートからゴールまで馬たちと一緒に歩いて間近で観戦できることも、ばんえい競馬ならではの楽しみ方ですね」

この日の第6レースが始まった。馬たちは力強く坂を駆け上がり、観客は大声で応援しながらレースを追う。目の前で繰り広げられるど迫力のレースは、めちゃめちゃ熱い!「競馬場の奥の広い敷地に厩舎があり、約700頭の馬たちが調教師や厩務員と生活しながら、毎日トレーニングを重ねています。鍛え上げた馬たちのたくましさ、障害を駆け上がる力強さを、競馬場に足を運んで間近に観てほしいですね」第7レースの馬券を買ってみようと、競馬新聞と騎手リーディングを参考に予想し、見事的中!まさにゴール直前で1着馬が差し切る逆転劇だった。ゴール前は興奮して、思わず大声で叫んじゃいました。やっぱりばんえい競馬は、競馬場でライブを観るのがイチバンなのだ!

▲2つの障害を駆け上がるためには、騎手の駆け引きとテクニックが重要となる
▲隣接する〈馬の資料館〉でばん馬のルーツと歴史を学ぼう
▲〈とかちむら〉の産直市場には十勝の生産者が持ち寄った新鮮野菜や乳製品などがいっぱい
▲〈ふれあい動物園〉では、ポニーやウサギ、ニワトリなどとふれあい、ばん馬にニンジンの餌やりもできる

<DATA>
帯広競馬場 (ばんえい十勝)
Obihiro Racecourse

住所:帯広市西13条南9丁目
TEL:0155-34-0825
公式サイト:https://banei-keiba.or.jp

photo: Natsumi Chiba

text: Katsuaki Takasaki

北海道のいいところ、再発見!
ドラマティックな冬のナイトトリップ

冬の北海道を旅するなら、夜も楽しまなきゃもったいない。日没後に盛り上がる、全道各地のイベントをご紹介します。
※情報内容は天候により変更・中止になる場合があります。お出かけの際は事前に公式サイト等でご確認ください。

1.北海道のまん中・旭川空港

あさひかわ街あかりイルミネーション 2024
Asahikawa Machiakari illumination 2024

◎旭川市

旭川市の中心市街地を、さまざまな光のモニュメントやイルミネーションで彩る冬の風物詩。今年は昨年より2万球増球し、約23万球で開催。JR旭川駅のモニュメントイルミ、上空から光が降り注ぐアイスフォール、7条緑道の光のトンネルなど、見どころはたくさん。冷えた身体を沿道のカフェで温めたり、昭和の雰囲気の歓楽街〈3・6街(サンロク街)〉に立ち寄るなど、旭川流の夜を体験しよう。

<DATA>
開催期間:2024年11月30日(土)〜2025年3月9日(日)
開催場所:平和通買物公園/緑橋通/昭和通/7条緑道/旭橋通(ロータリー)
点灯時間:16:30~23:00
(2月中旬以降は17:30点灯開始)
TEL:0166-23-0090
(旭川街あかり実行委員会・旭川観光コンベンション協会内)
公式サイト:https://machiakari.atca.jp/

2.たんちょう釧路空港

阿寒湖氷上フェスティバル ICE・愛す・阿寒「冬華美」
Lake Akan ICE Festival ICE・Aisu・Akan「Fuyuhanabi」 (Winter Fireworks)

◎阿寒町

真冬には気温がマイナス20度に達することもあり、湖面が分厚い氷に覆われる阿寒湖。湖面の凍結が確認されると開催される同イベントの目玉は、氷上から夜空に打ち上げられる大輪の花火。氷点下の澄み切った空気の中で見る花火は幻想的だ。観光案内所「まりむ館」がプロジェクションマッピングで彩られる「阿寒湖ウィンターイルミネーション」も開催され、足を延ばしてみるのもまた楽しい。

<DATA>
開催期間:2025年2月1日(土)~3月1日(土)
※冬華美のみ~3月16日(日)
※阿寒湖ウィンターイルミネーションは2024年12月1日(日)~25年2月28日(金)(変更あり)
開催場所:阿寒湖氷上特設会場
花火:20:00~
TEL:0154-67-3200(阿寒観光協会まちづくり推進機構)
公式サイト:https://ja.kushiro-lakeakan.com/things_to_do/1855/

3.函館空港

2024はこだてクリスマスファンタジー
Hakodate Christmas Fantasy

◎函館市

函館西部地区の金森赤レンガ倉庫前海上で開催される、花火とイルミネーションのファンタジックなイベント。倉庫群前の海上に巨大クリスマスツリーが設置され、歴史情緒あふれるベイエリアがよりロマンティックな雰囲気に。毎日18時の点灯に合わせて花火が上がり、夜空をイルミネーションと花火が照らし出す。毎日16時30分からスープバーもオープン。地元食材を使ったスープで温まるのもまた一興だ。

<DATA>
開催期間:2024年11月30日(土)〜12月25日(水)
開催場所:赤レンガ倉庫群前海上
点灯時間:16:30〜17:45、18:00〜22:00
花火:18:00〜(期間中毎日)
TEL:0138-27-3535(函館国際観光コンベンション協会)
公式サイト:http://www.hakodatexmas.com/

4.新千歳空港

青の運河&小樽運河ナイトクルーズ
Blue Canal &Otaru Canal Night Cruise

◎小樽市

小樽運河を、この季節だけ青いイルミネーションでライトアップ。日没後のブルーアワーが空に広がり、青でライトアップされた運河との組み合わせはまた格別。さらに、ナイトクルーズに申し込めば運河の中からその風景を楽しめる。いくつもの橋をクルーズ船でくぐり抜け、一味違った時間に身を委ねよう。

<DATA>
◎青の運河
開催期間:2024年11月1日(金)~2025年1月31日(金)
点灯時間:日没〜22:30
TEL:0134-33-2510(小樽観光協会)
公式サイト:https://otaru.gr.jp/citizen/winter-blue-canal
◎小樽運河ナイトクルーズ(通年)
発券・発着所:小樽運河中央橋 ※チケットの販売は各便出港時刻の15分前まで
運航時刻:16:00~20:00の間で30分間隔(月により異なる。公式HPにて要確認)
TEL:0134-31-1733(小樽運河クルーズ)
公式サイト:https://otaru.cc/

5.女満別空港

北見厳寒の焼き肉まつり
Kitami Genkan no Yakiniku Matsuri

◎北見市

焼肉のタレも凍るほどの寒さの中、真冬の夜に野外で開催される焼肉イベント。チケットは11月29日(いい肉の日)に発売され、例年即日完売するほどの人気イベントだ。七輪550台が並び、2000人以上が完全防備をしながら肉を焼く姿は、まさに壮観!
チケット代には焼肉の材料費も含まれているが、当日屋台で追加注文も可能。エゾシカ肉やソフトクリームが人気だという。熱気のこもった会場でアツイひと時を楽しもう。

<DATA>
開催日時:2025年2月7日(金)17:30~20:00
※2025年分のチケットは完売
開催場所:北見芸術文化ホール駐車場 特設会場
TEL:0157-32-9900(北見市観光協会)

text: Chie Tsushima

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