【道東"乾杯"ガストロノミー旅(後編)】
ビールでつながる「Brasserie Knot」と
北の海霧が琥珀を育む「厚岸蒸溜所」を訪れる
【道東"乾杯"ガストロノミー旅(後編)】
ビールでつながる「Brasserie Knot」と
北の海霧が琥珀を育む「厚岸蒸溜所」を訪れる
2025.12.2
旅の後編は、クラフトビールとジャパンウイスキーを求めて釧路エリアへ。
鶴居村の「Brasserie Knot」では、地域の自然・人・文化を結ぶ一杯を。さらに、スコッチの聖地・英国アイラ島を思わせる夜霧のまち・厚岸町では、世界が注目する「厚岸蒸溜所」を訪問。極上のウイスキーと地元食材のペアリングを体験してきました!
※本記事は2025年10月時点の情報です。おでかけの際は公式サイトで最新情報をご確認ください。
ワインだけじゃない!道東エリアがけん引する"お酒の産地"北海道
近年、北海道ではワインにとどまらず、ジャパニーズウイスキー、クラフトビール、日本酒、ジンなどが次々と誕生し、日本有数の「お酒の産地」として成長しつづけています。道東エリアもその最前線。豊かな自然資源や冷涼な気候は仕込みや熟成に最適で、地域性豊かな素材を活かした魅力的な製品が生まれています。
北海道各地の酒造所についてはこちら
北海道に酔いしれて
前編では十勝ワインを訪れましたが、後編はクラフトビールとウイスキー、そしてそれぞれの土地の極上ガストロノミーとのペアリングを体験。まずは、鶴居村のユニークなブルワリーへ向かいました!
体育館が醸造所に!鶴居村の文化と"乾杯"する「Brasserie Knot」
さまざまなカルチャーとの"結び目"になる、ブルワリー
たんちょう釧路空港から北へ約35km、人口2400人ほどの小さな村・鶴居(つるい)村。市街地から少し離れた酪農地帯に、クラフトビールを製造する「Brasserie Knot(ブラッスリー・ノット)」があります。
ここは2004年に廃校した旧茂雪裡(もせつり)小学校をリノベーションしたブルワリー。元体育館がビール工場として生まれ変わりました。見学通路から内部が公開されているほか、空いている教室はバンドの練習所や卓球場としても開放。ビールを通じてさまざまな文化との"結び目(Knot)"が生まれる場になっています。
クラフトビールを知らない人に、クラフトビールの面白さを伝えたい
ブルワー歴約20年の代表取締役・植竹大海さんは、カナダのブルワリーで活躍後、2021年に帰国。「せっかく日本に帰るなら、クラフトビールが浸透していない地域で、その面白さを伝える活動をしたいと思いました」と、当時を振り返ります。
そこで植竹さんが注目したのは、ブルワリーの少ない「道東」。さまざまなまちを訪れ、醸造所に適した物件を探していたとき、旧茂雪裡小学校のことを知ります。
「決め手は体育館です。内部に柱がなく、天井が高い。これはビール工場として理想的な建物でした。この出会いが大きかったですね」
そして2022年にブルワリーをオープン。今年で醸造4年目を迎えました。
花鳥風月の哲学。「山幸」を使ったビールによる"道東の共演"
Brasserie Knotでは、定番商品全4種類を提供。
「商品名を漢字にすると"花鳥風月"です。四季折々の風景を楽しむように、ビールも季節や料理、そのときの気分に合わせて選んでもらいたい。そういう思いを込めました」
また、道東の旬の果実などを副材料として取り入れた期間限定ビールも評判。
例えば、「YAMASACHI」は、前編で訪れた池田町ブドウ・ブドウ酒研究所にて開発された、赤ワイン用品種「山幸」を使用。毎年10月に鶴居村産の山幸で仕込む、鶴居村の冬の風物詩的なビールです。
「当社のビールで、『今年も冬が来たね』と、飲食店さんとお客さんとのコミュニケーションが生まれる。そういうつながりも大切にして、ビールをつくっています」
北海道最大級のビールサーバーがある直売所で試飲を楽しむ
お話を聞いていたら、すっかり喉が渇いてきました。早速、直売所へ。
ここには最大20種類の銘柄を提供できる、北海道最大級のビールサーバーを設置。缶ビールの販売だけでなく、グラウラーによる量り売り(32oz/約960ml 1300円~)や、試飲(100ml 220円)も可能。
まずは、定番商品の「WIND」を1杯。IPAならではの、ポップの強い苦みと華やかな香りが口に広がります。続いて、ハチミツの程よい甘さとカモミールの上品な香りが印象的な「HAOTO」。さらに、漆黒の海を思わせる、なめらかで深みのあるコクが口に広がる「YONAGI」をいただきました。
どれも「うまい!」と飲み手のツボを突く、個性的で華やかな決め技を持ちつつも、後味はスッとノドに馴染むほどマイルド。料理やシーンに合わせて"選ぶ楽しさ"が膨らむ、見事なバランスです。
植竹さんおすすめ!クラフトビールと合わせたい鶴居村ガストロノミー
せっかくなら鶴居村の特産品と味わってみたいと、植竹さんにおすすめのペアリングを教えていただきました!
「鶴居村はチーズが有名です。なかでも、酸味が少なく、口あたりが優しい『マイルド』には『FLOWER』、長期熟成し酸味と塩味が強い『ゴールド』には『MOON』と合わせるのがおすすめです。あと、鹿肉をジンギスカン風に味付けをしたものと『WIND』もいいですね。ホップの苦みと香りが鹿肉の味わいとよく合います」
旧小学校の懐かしい雰囲気の中で味わう、極上のクラフトビール。心も体もあたたまる、心地よい余韻に浸りながら、旅はさらに東へと進みます。
◆Brasserie Knot(ブラッスリー・ノット)
住所:阿寒郡鶴居村茂雪裡69-8
TEL:非公開
営業時間:12:00~15:00(土曜日・日曜日・祝日は10:00~16:00) ※直売所での量り売り・試飲のラストオーダーは閉店時間の30分前
定休日:不定休
公式サイト:https://brasserieknot.jp/
Brasserie Knotのビールを通販で買えるのはここだけ
AIRDO公式オンラインショップ「AIRDO Online Marché」
北の海霧が育む、スコッチの聖地を彷彿とさせる「厚岸蒸溜所」
理想のウイスキーを目指して、厚岸町に蒸溜所を建設
道東"乾杯"ガストロノミー旅の締めに訪れたのは、鶴居村から南東へ約70km、国内有数の牡蠣の産地・厚岸(あっけし)町にある「厚岸蒸溜所」です。
東京に本社を置く、堅展実業株式会社の2代目社長・樋田恵一さんがウイスキー事業を立ち上げ、2016年に蒸溜を開始しました。
樋田社長はかねてよりスコッチウイスキー、特に磯っぽくスモーキーな香りが特徴のアイラモルト(スコットランド・アイラ島でつくられるシングルモルトウイスキー)の熱烈なファンでした。いつしか自らアイラモルトのようなウイスキーを手がけたいと考え始めました。当初は、他社から原酒を仕入れ、独自に樽熟成させる計画を構想します。しかし、原酒を樽に充填する作業だけでも酒類製造免許が必要であることを知り、自社で原酒から製造しようと蒸溜所建設へと舵を切りました。
その舞台として厚岸町が選ばれた理由は、憧れのアイラ島同様、寒暖差が大きく、冷涼湿潤な気候で、ウイスキーに複雑なアロマを生む、"海霧(うみぎり)"が発生しやすい環境であったため。加えて、ウイスキーづくりに欠かせないピート(泥炭)層を通った澄んだ水を仕込み水として使用できることも決め手となり、理想のウイスキーを目指して、この地に蒸溜所を立ち上げました。
ここでも、メーカーの垣根を越えた"道東の共演"が実現
ウイスキーへの道のりは遠く、計り知れない──。蒸溜所を案内してくれたウイスキー事業本部・島野龍哉さんのお話をうかがって、そう思いました。
「ウイスキーが出来上がるまで、大麦の粉砕・糖化・発酵・蒸溜・樽詰・熟成の工程を経ます。このうち、人の手を必要とするのは蒸溜までの1週間。樽詰めをしてから3年以上は、人は介入できません。美味しいウイスキーになるようにと、厚岸の気候と風土にお任せするのみです」
人の手が離れるからこそ、ウイスキーが長い眠りにつく"樽"の選定も重要です。ここで香りや味わいが決まるといっても過言ではありません。厚岸蒸溜所では、バーボン樽やシェリー樽、希少なミズナラ樽のほか、十勝ワインの熟成に使われたワイン樽も導入。ここでもつながっていた、メーカーの垣根を越えた"道東の共演"に心が躍りました。
アイラ式で味わう!厚岸限定ウイスキーと極上牡蠣のペアリング体験
2018年2月にリリースされた初商品「厚岸 NEW BORN FOUNDATIONS 1」を皮切りに、次々と商品が登場。2025年11月には、「二十四節気シリーズ・第21弾『小寒』」がリリースされました。
ただし、小規模の蒸溜所である希少性と人気の高さから、販売店にて抽選販売でしか手に入りません。なかでも二十四節気シリーズは、発売と同時に売り切れる大人気商品です。
そこで、試飲ができる見学ツアーに参加! 厚岸味覚ターミナル・コンキリエで実施している見学ツアーでは、「二十四節気シリーズ」から1種と、厚岸町内の飲食店でしか提供していない「牡蠣の子守唄」を味わえます。
ウイスキーに合わせるのは、もちろん厚岸産の牡蠣です。アイラ島も牡蠣の名産地で、生牡蠣にウイスキーを垂らして食べるのだとか。早速、アイラ式でいただきます!
ウイスキーのスモーキーな香りが牡蠣の磯の香りと溶け合い、口の中に至福の余韻を広げます。同じ潮騒の中で育まれたウイスキーと牡蠣。合わないわけがありません。
職人の情熱と、極上ガストロノミーに酔いしれた1泊2日
池田町のワインと幻の「いけだ牛」、鶴居村のクラフトビールと「鹿肉ジンギスカン」、厚岸町のウイスキーと「極上の牡蠣」。道東が誇る「美酒」と「美食」、そしてお酒づくりに挑む職人たちの情熱に酔いしれた、感動の1泊2日でした。
ぜひ、あなたも北海道"乾杯"ガストロノミー旅で、自分だけの最高のペアリングを見つけてみてください。
◆厚岸蒸溜所
住所:厚岸郡厚岸町宮園4丁目109-2
TEL:0120-66-1650(お客様センター)
公式サイト:http://akkeshi-distillery.com/
◆厚岸蒸溜所見学ツアー
集合場所:厚岸味覚ターミナル・コンキリエ(厚岸郡厚岸町住の江2丁目2)
開催期間:4月中旬~11月中旬の指定日 ※参加の3日前までに要予約
開催時間:9:30スタート(約1時間30分)
参加人数:10名まで ※定員になり次第予約受付終了
参加資格:20歳以上
参加料金:1人5000円(ガイド、厚岸ウイスキー試飲、記念キーホルダー付き) ※牡蠣は参加料金に含まれていません
予約サイト:https://www.conchiglie.net/tour/tour6
※蒸溜所までは送迎車で移動。
※ツアーに参加されない方(未成年者など)の同行はご遠慮ください。
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※本記事は2025年10月時点の情報です。おでかけの際は公式サイトで最新情報をご確認ください。
企画・制作:株式会社monomode
取材・編集:宮本 育
撮影:須田守政(FIXE)

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