地方発送は1年待ち!丘の上にある小さなプリン屋さん「エゾアムプリン製造所」

地方発送は1年待ち!
丘の上にある小さなプリン屋さん
「エゾアムプリン製造所」

2024.12.27

十勝岳を望むラベンダーのまちとして知られる富良野市。季節を問わず多くの観光客が訪れるこのまちに、全国から予約注文が集まるプリン店があります。それが「エゾアムプリン製造所」です。今回は、同店の工房にお邪魔し、作り手である加藤ご夫妻にインタビュー。ひとくち頬ばると思わず笑みがこぼれる、極上プリンを作る様子も見学させていただきました!

※本記事は2024年9月時点の情報です。ご来店の際は公式サイトで最新情報をご確認ください。
※価格はすべて税込みです。

富良野から全国へ届けられる極上プリン

雄大なロケーションからさまざまなドラマや映画が生まれた、北海道のへそのまち・富良野市。

▲十勝岳連峰を望む富良野市

富良野市街地から道道544号を抜け、さらに道道235号を右へ。そこから約10分、「本当にこの道で合ってる?」というこちらの不安が届いたかのように、小さな看板が目に入ってきました。

▲道道235号沿いにある看板が目印

ここから点々と現れる、可愛らしい道しるべをたどって車を走らせた先に「エゾアムプリン製造所」があります。地方発送は1年待ちという、手づくりプリンのお店です。

▲最後の看板。到着までもうすぐ
▲こちらが工房。通称、プリン小屋
▲リーダー「丘」のある風景に惹かれ、移住先を富良野に決めました。

ここでプリンを作るのは、リーダー&アムちゃんこと、加藤ご夫妻。
もともと東京で約2年、手づくりプリンの移動販売を行なっていましたが、自然の中で暮らしたいと思い、東京を離れることを決意。キャンプをしながら新天地を探していたときに出会った。

導かれるように、加藤ご夫妻と富良野をつないだ「丘」の上に理想の土地が見つかり、そこに建てたのが現在のプリン小屋です。残っていた基礎をそのまま活かし、廃材を使って、ご夫妻と、リーダーのお父様の3名で建てました。店名を、"エゾ地(北海道)でアムちゃんが作るプリン"から、「エゾアムプリン」と命名。

▲アムちゃん
▲ムラさん

そして、加藤ご夫妻が富良野に移住した2006年の翌年に、心強い助っ人・ムラさんが仲間入り。

自然に囲まれたプリン小屋。ピカピカに磨かれた作業台で、真っ白な制服に紺色のエプロンをつけて働く、リーダー、アムちゃん、ムラさん。少数精鋭の小さな工房から、全国に感動が届けられているのです。

エゾアムプリンが出来るまで

「エゾアムプリンに使う卵は、富良野の養鶏場さんから仕入れています。日本国内で育種された純国産鶏である『さくら』の卵です。牛乳は、プリンを作る日の朝に、富良野の酪農家さんまで搾りたてを取りに行きます」と、リーダー。

地産地消にこだわり、生クリームも、てんさい糖も、カラメルを作る湧き水も、北海道産。バニラビーンズといった輸入物は一切使いません。

▲素材を計量し混ぜ合わせることから始まる

「作り方は、卵と牛乳と生クリームなどを混ぜ合わせたプリン液を容器に流し込んで焼くだけと、いたってシンプルです」とのこと。しかし、作業場を見渡すと、設備はオーブンだけ。ミキサーといった機械がありません。なんと、焼くまでの作業は、すべて手動です。

▲殻が入らないよう卵を一つひとつ丁寧に割る
▲作業中、工房の中に穏やかな時間が流れる
▲手作業でしっかり溶き混ぜる
▲複数の工程を経て、プリン液が出来上がる

1日に作るプリンの数は27個。1個が約8人分なので、200人分以上に相当する数の卵を割り、溶きほぐします。お立ち台に上がったアムちゃんが、リズミカルにホイッパーを回す音が、作業場の中に響きます。

▲2024年2月からアルミ容器に変更した

以前は、入れ物に陶器を使用していましたが、日本に陶器の原材料が入ってこなくなり、あるとき、入手できなくなりました。やむを得ず、アルミ容器に変更。これによりプリンそのものの製造方法も再検討しなければならない一大事となりますが、思わぬ功を奏したと言います。

「陶器を使っていたときは、プリンの中にカラメルを練り込んでいましたが、アルミ容器の場合、その製法では容器が腐食してしまうことがあります。いろいろ試行錯誤して、カラメルを混ぜない製法にしたことで、卵や牛乳本来の味をダイレクトに感じられるプリンになりました」と、リーダー。

▲アルミ容器にプリン液を流し込む

さらに、アルミ容器がもたらした"良いこと"はほかにもあるそう。

▲熱の入りをこまめにチェックしながら焼く

「陶器に入ったプリンは、とにかく重い。しかも、器によって厚みや釉薬の加減が異なっていたので、熱の入りが不均等。5分おきにプリンの位置を入れ替える必要があったんです。重たい天板を何度もオーブンから取り出すので、アムちゃんも、ムラも、すっかり肘を痛めてしまいました。ですが、アルミ容器にしたら、それらの問題も解決しました。まさに、怪我の功名」

アムちゃんが言います。

「目標は、おじいちゃんやおばあちゃんになっても、健康に、プリンを作り続けること。器のことなど大変なことがいろいろあったけど、すべての出来事が私たちの望む方向へと進むきっかけとなってくれて、ようやく理想的な形になりつつあるかな。幸せなリズムになっています、プリンづくりも、生活も。今すごく良い感じ。とっても平和です」

▲ラッピングして完成。「プリン」(1個3200円) 。カラメル付き

季節によって味わいが変化するプリン

「プリン、食べます?」というアムちゃんのお言葉に甘えて、早速、味見させていただきました!
ちなみに、切り分けるにはちょっとしたコツが必要とのこと。ぜひこちらの動画をご参考ください。

<エゾアムプリン製造所 公式YouTubeチャンネル「プリンの出し方」>
https://www.youtube.com/watch?v=RL-NtIgyFJ4

おやつを待つ子どものようにワクワクしながら、切り分けるアムちゃんの手元を眺めます。ナイフが入る様子から、もっちりとした食感が伝わってきました。

▲1個の内容量は1000g。およそ8人分

まずは、何もかけず、そのままをひと口。昔ながらの、懐かしい固めプリンの弾力が口の中で踊り、その次に濃厚な卵の風味、牛乳のコクが後を追ってきます。

ふと、ひと口の中に食感の違いがあることに気づき、プリンをよく見ると、上に1㎝ほどの層がありました。

▲季節によって脂肪分の厚さが変わる

「これは牛乳の脂肪分です。搾りたての成分無調整牛乳を使っているので、焼いている間に上に集まってきます。この層は季節によって変化するんですよ。冬の牛乳は脂肪分が高くなるので層が厚く、より濃厚に。夏は層が少し薄くなって、さっぱりした味わいに。そんな季節感を楽しめるんです」と、リーダー。

ほかにも、牛が食べる牧草の質などによっても味にゆらぎが生まれるそう。つまりは、今、目の前にあるプリンとは、一期一会の出会いなのです。

▲富良野の湧き水を使用して作ったカラメル

続いて、添えられているカラメルソースをかけていただきます。ほろ苦いカラメルが、さらにご馳走感をアップ。特に、もってりとした上の層と組み合わせることで、さらに牛乳の風味やコクが際立ちます。

▲味見のつもりが、スプーンが止まらない......

地方発送は1年待ちですが、店頭での購入は、比較的買いやすいとのこと。

「冬も営業しています。ご予約のうえ、安全運転でお越しください」

雪に覆われた晴れた日の富良野でのドライブも、また格別です。

<DATA>
エゾアムプリン製造所
住所:富良野市平沢3893-4
TEL:0167-27-2551
営業時間:11:00~17:00(電話受付は10:30~17:00)
営業日:木曜日、金曜日、土曜日、日曜日
公式サイト:http://www.amupurin.com/

企画・制作:株式会社monomode

取材・編集:宮本 育

撮影:須田守政(FIXE)

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