北海道・旭川の歴史と共にあゆむ
1944年創業のお醤油屋さん
「日本醬油工業株式会社(キッコーニホン)」

北海道・旭川の歴史と共にあゆむ
1944年創業のお醤油屋さん
「日本醬油工業株式会社(キッコーニホン)」

2026.1.15

かつて蝦夷地(えぞち)と呼ばれた北海道。政府は1869年に開拓使を設け、北海道の本格的な開拓に着手しました。なかでも旭川は、北方警備に欠かせない重要な地であると考えられ、ここに北京(ほっきょう/北の都)を築き、天皇の別邸である離宮を誘致する構想が立てられたこともありました。そこで今回は、旭川最古の醤油メーカー「日本醬油工業株式会社」を訪問。同社代表取締役社長の茂木浩介さんに旭川や同社の歴史についてお話を伺ってきました。

※本記事は2025年5月時点の情報です。おでかけの際は公式サイトにて最新情報をご確認ください。

地元の味を守る、旭川最古の醤油メーカー

日本醬油工業株式会社とは、1944年に創業した醤油メーカーです。
「旭川名物"しょうゆラーメン"の醤油ダレは地元の醤油を」という思いから、市内にあるラーメン店の多くが同社の醤油を使用。長年にわたり、ご当地の味を守り続けています。

▲日本醬油工業株式会社

2025年、同社商品「キッコーニホン特級」が、第52回全国醤油品評会にて農林水産大臣官房長賞を受賞。最高賞である農林水産大臣賞には通算4回の受賞歴があり、その確かな品質は長年にわたり高く評価され続けています。
さらには、2009年ごろから北海道の特産品を使った調味料の開発もスタート。
なかでも、北海道産タマネギを使用した「北海道タマネギドレッシング」がさまざまなテレビ番組で紹介されるなど、各方面から高い評価を得ています。

▲右から3本目が「キッコーニホン特級」。ほかにもバラエティに富んだ商品が並ぶ

旭川の未来のために、旭川の歴史を語り継ぐ

同社は終戦直前に創業しましたが、事務所として使用している建物は明治期に建てられたもの。

同社代表取締役社長の茂木浩介さんは言います。

「当社の起源は、1891年に鈴木亀蔵らが設立した酒造店から始まっているんです」

▲代表取締役社長・茂木浩介さん

鈴木亀蔵とは、1870年代、旭川に最初に定住した入植者。
入植当時は、アイヌとの交易を生業としていました。
誠実な人柄で、平等かつ公平な取り引きを行なっていたことから、アイヌの人々から深い信頼を寄せられていたと言われています。

▲鈴木亀蔵(写真提供:旭川市中央図書館)

北海道開拓が着々と進み、旭川にも屯田兵が入ると知った亀蔵は、これを機にまちが賑わうと考え、1891年、仲間と共同で旭川市曙1条1丁目に酒造店を開きます。
このときに建てられた建物が、現在の日本醬油工業株式会社の社屋です。

▲酒造店当時の建物(写真提供:旭川市中央図書館)
▲現在の様子。当時の面影が残っている

茂木社長は続けます。

「酒造業を営んだ後、1944年に国の施策で醤油工場に転換し、日本醬油工業として醤油づくりをスタートさせました。なので、醤油メーカーとしては81年ですが、当社のことを語るうえで欠かせない亀蔵の旭川入植まで遡ると1877年ごろからの歴史があります。それは旭川村が設置される以前にまで遡り、このまちの黎明期と深く重なります。ここで歴史的建造物や設備を見せながら、当社の歴史を語ることは、旭川の歴史を語ることにもつながるということです」

▲同社では、醤油のおりを入れる木桶など、貴重な産業遺産を見学できる

旭川の歴史を語ること。
それは、明治期、旭川に天皇の別邸である離宮を設置し、上川地方を中心に北海道開拓を進める構想が持ち上がったほど、旭川は魅力的なまちであること。
亀蔵とアイヌの関係性から学べる、多様性と共生のヒントが旭川にあること。
旭川には、かつて24もの酒蔵があり、現在も醤油づくりや酒づくりが行なわれる「醸造のまち」であること。
何よりも亀蔵をはじめとする先人たちの苦労や努力があったからこそ、北海道第2の都市・旭川があること。

▲嵐山展望台から望む旭川市内と大雪山

それらの物語を語り継ぎ、旭川の素晴らしさをアピールすることは、地域の観光や経済に波及効果を生むだけでなく、旭川の未来を担う子どもたちが自らの故郷に自信を持つきっかけにもなり得ます。

「旭川のために頑張ってきた、すべての人の努力を無にしないために。その使命のもと、工場見学を通した産業観光や発酵を活かしたツーリズムにも力を入れています」

工場見学で、いにしえの時代にタイムスリップ

そのような旭川の歴史に触れながら、同社では、かつて稼働していた歴史的建造物や製造設備を見学できます(要予約)。

▲醤油づくりの工程について書かれた案内板

さっそく、茂木社長にご案内いただきました。

まずは、案内板の前で醤油が完成するまでについて学習。
醤油をつくるには、原料として大豆・小麦・食塩を使用しますが、さらに麹菌、酵母菌、乳酸菌の3つの微生物が働き、複雑な工程を経て出来上がるそう。身近な調味料であるのに、初めて知ることばかりです。

▲「醤油づくりにおいて、人は微生物の仕事を手伝うだけ。いつの時代も変わらない基本です」と茂木社長

いよいよ工場内部へ。
こちらは、熟成したもろみから醤油を搾るための「圧搾機」。ろ布(ろふ)と呼ばれる布にもろみを入れて、じっくり時間をかけて搾ります。
この方法は、工場の近代化が進んだ今も原理は変わらないとか。

圧搾機を動かすために欠かせないのが「蓄力機」です。2トンものおもりにポンプで水を送り、その水圧で圧搾機が動き、もろみを搾ります。
現在では、なかなか見られない貴重な機械です。

▲蓄力機

ほかにも、酵母などの微生物に酸素を送るための「コンプレッサー」や、醤油の風味と品質に欠かせない酵母を育てる「酵母培養室」などが、当時のまま残っています。

▲コンプレッサー
▲酵母培養室

なかには、今もなお現役で稼働しているものもあり、それらを一つひとつ、ユーモアを交えて説明していただけるので、あっという間に時間が過ぎていきました。

▲工場内にはトロッコのレール跡も。重いものはトロッコに載せて運んだ

工場見学の後は、レトロな雰囲気の直売店で、お買い物をどうぞ。

▲直売店には、約100種類もの商品が並ぶ

醤油やドレッシングはほぼ試食ができるので、自分の味覚に合った一品が見つかるはず。
ほかにも、もろみを搾るときに使用した「ろ布」で作ったカードケースやトートバッグ、さらには地元企業とコラボレーションした羊羹やパイといったお菓子なども販売。旭川土産にうってつけです。

▲ろ布カードケース 各1800円
▲左から桜花しょうゆアイス(季節限定)、醤油あずき、醤油ミルク 各170円

旭川を訪れた際は、日本醬油工業株式会社へ。
いにしえの旭川に触れ、新しい魅力に出会えることでしょう。

<DATA>
日本醬油工業株式会社
住所:旭川市曙1条1丁目
TEL:0800-800-7772(フリーダイヤル)
営業時間:直売店10:00~17:30
定休日:年中無休 ※年末年始は休み
公式サイト:https://www.kikkonihon.co.jp/

※価格はすべて税込です。
※工場見学は要予約。無料コースと有料コースがあります。
※本記事は2025年5月時点の情報です。おでかけの際は公式サイトにて最新情報をご確認ください。

企画・制作:株式会社monomode

取材・編集:宮本 育

撮影:須田守政(FIXE)

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