ひんやり、スーッと爽快!かつて世界を席巻した
"北見ハッカ"の歴史をめぐる旅へ
「北見ハッカ記念館・薄荷蒸溜館」

ひんやり、スーッと爽快!かつて世界を席巻した
"北見ハッカ"の歴史をめぐる旅へ
「北見ハッカ記念館・薄荷蒸溜館」

2025.11.11

女満別空港から車で約35分。オホーツクの風を感じながら向かうのは、かつてハッカ王国として栄えたまち・北見地方。実は、最盛期には世界のハッカ総生産量の約7割をこの地が占めていました。今回は、北見地方の発展を支えた"北見ハッカ"の足跡をたどりながら、その歴史と暮らしに役立つハッカの魅力を再発見する旅に出かけました!

※本記事は2025年5月時点の情報です。おでかけの際は公式サイトにて最新情報をご確認ください。

世界のハッカ総生産量の約7割を占めていた北見地方

北見地方でのハッカ栽培は、1896年に山形県から持ち込まれた種根から始まりました。
当時の農家にとって、ハッカは穀物や野菜よりもはるかに高い収入が得られる"夢の作物"。
またたくまに広がり、北見地方はハッカの一大産地へと成長していきます。

▲和種ハッカ

特に重宝されたのが、北見地方で栽培されていた和種ハッカからしか採れない「ハッカ脳」という結晶。医薬品として世界から引っ張りだこでした。

▲大きく結晶化した貴重なハッカ脳。北見ハッカ記念館で見られる

西洋諸国でハッカ脳を手に入れるには、どうしても日本に頼らざるを得ず、その需要に応えるため、北見地方のハッカ畑はどんどん広がり、1939年にはなんと東京ドーム約4285個分に相当する2万haにまで拡大!
北見地方は文字通り、"ハッカ王国"として世界の中心に君臨したのです。

▲ハッカから抽出したオイル「取卸油」

ちなみに、ハッカは大量の葉を蒸して抽出した"取卸油(とりおろしあぶら)"にして出荷するため、穀物や野菜より輸送費がかからない"薄い荷"でした。この言葉が『薄荷(はっか)』の語源になったという説もあるんですよ。

日本近代化案業遺産認定!北見ハッカ記念館・薄荷蒸溜館

ハッカ景気にわいた当時の様子など、北見ハッカの歴史に触れられるのが、「北見ハッカ記念館」です。

▲北見ハッカ記念館

同施設は、旧ホクレン北見薄荷工場の研究所。1983年の工場解体の際、ホクレンから北見市に寄贈されたものです。
実際に使用されていた貴重な設備を展示しており、2007年に経済産業省の「日本近代化産業遺産」に認定されました。

▲製品ができるまでの工程などを知ることができる

同施設の目玉は、当時のハッカ景気を支えた「田中式薄荷蒸溜器」。
これは、ハッカからオイルを抽出する機械で、田中式が登場するまで使われていた「箱せいろ式蒸溜器」よりも約3倍もの量を短時間で抽出できました。

▲田中式薄荷蒸溜器

同施設の職員である浅井かずみさんは言います。

「箱せいろ式は、蒸気が漏れて効率が悪かったそうです。それを解決したのが田中式。蒸気の流れを工夫し、かまどの上の胴部分を持ち上げられるようにしたことで、作業効率が飛躍的にアップしました。ハッカ農家さんの大変さを解消し、生産量を大きく伸ばすきっかけになった、まさに革命的な発明だったんです」

▲中央が「箱せいろ式」。蒸溜器の歴史も紹介されている
▲蒸溜器の展示や、ハッカ蒸溜の実演を行なっている薄荷蒸溜館

そして、隣接する「薄荷蒸溜館」では、ミニ蒸溜器を使った実演を見学できます。

収穫したハッカを乾燥させ、蒸溜器で蒸し、そこで発生した蒸気を冷却することで、精油と水に分離。ここから精油のみを取り出したものが「取卸油」です。

▲ミニ蒸溜器でハッカを蒸溜中
▲蒸気を冷却し、精油と水に分離される

取卸油はハッカ工場に持ち込まれ、ハッカ脳とハッカ油に精製されて市場へ。天然の万能油として幅広く活用されました。

ハッカは、オールシーズンOKの万能アイテム!

「薄荷蒸溜館」内にある売店にて、さまざまなハッカ製品を販売しています。
なかでもイチオシは、同施設にて栽培したハッカから抽出した「北見薄荷取卸油(660円/3ml)」。
精製されたハッカ油同様、毎日の生活の中で使用することができます。

▲同施設オリジナル「北見薄荷取卸油」

ハッカと聞くと夏をイメージするかと思いますが、実は季節を問わずあらゆるシーンで使えるのです。

▲ハッカは除菌作用もあるので風邪予防にも

花粉が飛ぶ季節は、マスクやハンカチにほんの少しだけ取卸油をたらして、ムズムズする鼻に当てて深呼吸をすれば爽快感が広がります。

ついつい食べ過ぎてしまったときは、水に取卸油を混ぜたハッカ水でお腹すっきり。また、ホットタオルに取卸油を数滴しみ込ませたハッカ湿布は、運動後のアフターケアにも最適です。

▲取卸油を爪楊枝の先端1~2mmまで付けてから飲み物へ

ほかにも、お部屋や靴箱などの消臭、お風呂や就寝時のリフレッシュ、拭き掃除やお菓子づくり。なんと、花瓶に数滴入れることで切り花が長持ちするんです! まさに使い方は無限大。

▲同施設でしか手に入らないオリジナル商品

もちろん、取卸油のほかにも、プレミアムミントティー(1296円)やミントキャンディー(432円)など、さまざまなハッカ商品を販売しています。

余談ですが、取材したこの日は、奇しくも6月20日「ハッカの日」でした。

▲ハッカの日(6/20)限定でガチャイベント開催

ハッカの日は、売店にて1000円以上購入するとガチャが引けるというイベントを行なっており、筆者は取卸油3種セットをゲット。

うれしいお土産付きの北見ハッカの旅となりました。

<DATA>
北見ハッカ記念館・薄荷蒸溜館
住所:北見市南仲町1丁目7-28
TEL:0157-23-6200
営業時間:5月1日~10月31日9:30~17:00、11月1日~翌4月30日9:30~16:30
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
入館料:無料
公式サイト:http://www.kitamihakka.jp/

※価格はすべて税込です。
※本記事は2025年6月時点の情報です。おでかけの際は公式サイトで最新情報をご確認ください。

企画・制作:株式会社monomode

取材・編集:宮本 育

撮影:須田守政(FIXE)

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