20世紀が生んだ偉大な芸術家イサム・ノグチが大地に刻んだ彫刻 「モエレ沼公園」を訪れる(2)

20世紀が生んだ偉大な芸術家
イサム・ノグチが大地に刻んだ彫刻
「モエレ沼公園」を訪れる(2)

2024.10.18

世界的彫刻家として知られるイサム・ノグチの最大にして最後の作品である「モエレ沼公園」。自然とアートが融合した美しい景観を楽しんだ後、ガラスのピラミッド内にある人気フレンチレストラン「ランファン・キ・レーヴ」へ。モエレ沼公園のグランドオープンから多くの人々を魅了してきた料理を堪能してきました!

※本記事は2024年6月時点の情報です。おでかけの際は公式サイトで最新情報をご確認ください。
※価格はすべて税込です。

食べた人の記憶に刻み込むフレンチ料理

モエレ沼公園のシンボルであるガラスのピラミッドの中に、フランス語で「夢見る少年」という名のフレンチレストランがあります。『芸術家が子どもであることをやめたとき、芸術家でなくなる』という想いを胸に創作を続けたノグチ。目を輝かせながら自然と向き合う彼の姿を想起させるような名を冠した同店もまた、「食材」という自然と向き合い、そこに人の手を加えることと、素材本来が持つ魅力とのバランスを大切にしています。

東京で研鑽を重ね、北海道を代表するフレンチレストラン「モリエール」「マッカリーナ」などの立ち上げシェフとして活躍後、2003年のオープンから同店のシェフを務める、児玉雄次さんは言います。

▲児玉雄次さん

「この店をオープンする際、オーナーから『公園の料理をつくるように』と言われました。公園の料理とは何か? 悩みながらいろいろなことをやりました。ガラスのピラミッドを模してみたり、アートっぽくしてみたり......。だけど、そういうことではなかった。モエレ沼公園は、間違いなく世界的にもインパクトのある空間です。公園に遊びに来て、帰りに当店で食事をされるお客様の記憶に刻み込むような料理を提供することが、ここでフレンチレストランをやる意義だと気づきました」

そこで行き着いたのは、「人の手を入れすぎない」ということ。

「料理は手を加えるほど、時間をかけるほど、ビジュアルは美しくなりますが、味は落ちます。お客様の記憶に残る料理を提供するなら、美しさよりも味だと考え、『美味しい瞬間』にこだわりました。それによって細部のディテールが多少整っていなくても、当店のフレンチはそれでいいという結論に達したんです」

▲自然のエネルギーがたっぷりのプチトマト。素朴さを残しつつもごちそうに

例えば、プチトマトのマリネ。どのようにしたら記憶に残る料理になるかとイメージしながら、プチトマトが持つパワーを最大限に引き出す、必要最小限の調理しかしない、と児玉シェフは言います。だからなんでしょう。ひと口頬ばると、畑で収穫したばかりであることがわかる、鮮度の高さと素朴さを感じつつも、これまで気づかなかった魅力をまとったプチトマトがそこにいました。

まるで、人の手を加えすぎず自然との調和を大切にしていた、ノグチの想いと重なります。

「それが料理の原点であり、『イサム・ノグチがつくったモエレ沼公園の料理』という考えに至りました。そのような当店の料理が、モエレ沼公園を熟成させる1つになればと思っています」

こだわりの地元食材を使った、極上ランチを堪能

同店には、ランチ・ディナー合わせて6つのコース料理を用意していますが、今回は児玉シェフのスペシャリテを堪能できる7500円のランチコースをオーダー。季節によって料理の内容は異なりますが、この日はアミューズに「プチトマトのマリネ」、前菜に独特なチーズの香りが魅力の「ロビオーラのサラダ」と、太陽をたっぷり浴びた新鮮な夏野菜を使った料理からスタート。

▲プチトマトのマリネ ※写真は2人前です
▲ロビオーラのサラダ

続いては、枝豆やインゲンなどを生クリームで煮て、軽くグリルしたホタテと、ワサビ風味のエスプーマソースを添えた、同店の夏の定番「豆のフリカッセ」。フリカッセといえば、本場フランスでは冬の家庭料理ですが、同店のフリカッセは豆からただよう香りと、白いソースのビジュアルが涼を誘う、夏にぴったりの逸品。気温が高くなると、このメニューを目当てに訪れるリピーターも多いそう。

▲豆のフリカッセ

そして、ここからはお待ちかねのメイン料理へ。最初に運ばれてきたのは、「北寄貝(ほっきがい)のまるごとムニエル」。2023年から提供している、児玉シェフのスペシャリテです。

貝殻を開けると、まずボリュームに驚きます。北寄貝は通年で味わえる食材ですが、6月ごろがもっとも大きくなるとのこと。ぷりぷりとした食感、噛むほどに口に広がる、濃厚な旨みと甘み。バターでローストしたパン粉と、下に敷かれた玉ネギが引き立てます。

北寄貝は濃厚な味わいゆえ、下処理には知識と経験が必要なとても難しい食材。素材の特性をすべて長所に変えてしまう、児玉シェフの愛情のこもったお仕事が感じられました。

▲北寄貝のまるごとムニエル
▲羊肉の炭焼き

肉料理のメインは、「羊肉の炭焼き」です。スムーズにナイフが入るほど、柔らかい質感。しかし、適度な弾力による肉を噛みしめる楽しみが残っており、羊肉独特のにおいはほぼありません。ただただジューシーな肉の美味しさが全身に染み入ります。

締めくくりに、デザートと飲み物で食事の余韻を味わいます。この日は、芳醇なチーズの味わいが楽しめる「チーズケーキ」、卵のやさしい風味にほっこりする「プリン」、ふんわりと軽い口あたりの「シュー生地ドーナツ」、程よいビターさが心地よい「トリュフチョコレート」。日によっては焼きたてのクッキーが登場することも。

どの料理も、舌がキャッチする美味しいというポジティブな刺激に、今を生きている充足感を覚えるようでした。そして、この感動と食材たちが明日のチカラになる。食べることの大切さを感じたひとときでした。

▲デザート ※写真は2人前です

窓からの眺めも、楽しい食事のエッセンスに

料理の数々も素晴らしいですが、店内から眺める景色の素晴らしさも評判の同店。

▲ホワイエ
▲公園側がガラス張りの店内

席を案内されるまでホワイエで待っている間も、席に着いてからも、色とりどりの花が咲く花壇と、カラマツの林を眺めることができます。

▲小倉喜一さん

マネージャーの小倉喜一さんは言います。

「窓は西側なので、天気が良い日は夕陽がとてもきれいです。グリーンシーズンの札幌は18~19時が日の入りなので、夕食に当店のディナーを召し上がっていただきながら、日没とともに変わる空の色を楽しむのはいかがでしょうか。モエレ沼公園は、遮るものが何もない空の広さも魅力の場所なので」

札幌を訪れた際は、ぜひ「モエレ沼公園」、そして「レストラン ランファン・キ・レーヴ」へどうぞ。幸福感に満ちた素敵な思い出が心に刻まれることでしょう。

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レストラン ランファン・キ・レーヴ
住所:札幌市東区モエレ沼公園1-1 ガラスのピラミッド内
TEL:011-791-3255
営業時間:ランチ11:30~14:00、ディナー17:30~19:00
定休日:月曜、冬季(11月~翌3月 ※クリスマスを除く)
公式サイト https://lenfant-qui-reve.com/

※要予約。
※すべてのコースでサービス料(10%)が別途かかります。
※メニューは時期によって異なる場合があります。

企画・制作:株式会社monomode

取材・編集:宮本 育

撮影:須田守政(FIXE)

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