健さんは震災のあとに萬画館に来てくれていましたよね？

そうなんですよ。

割れたガラスを囲っていたベニヤ板にメッセージがあったので......あのメッセージにとても励まされて、元気をもらいました。

いえいえ。あのときは開いてなかったのかな......。

そうですね、まだ。

ですよね。だから中に入るのは初めてなんですよね。

まずこちらが石ノ森先生の紹介ゾーンです。もともと手塚治虫先生が住んでいたところに、石ノ森先生をはじめいろんな先生方が集まって、とても濃厚な生活を送っていたトキワ荘のことなどを。

かの有名なトキワ荘。石ノ森先生は出身が石巻なんですか？

出身は隣町の中田町、今の登米市というところです。ここから車で40分ぐらい。映画が大好きで、よく石巻に観に来ていたそうです。

なるほど。

津波で流されちゃったんですけど、すぐそこに岡田劇場っていう映画館があって、よく自転車で数時間もかけて映画を観に来ていたと聞きました。そして、ここからが常設展示室になります。この入り口の天井にあるオブジェなんですけど、パッと見はただの鉄屑ですが、人が通るとスポットライトが点いて、下に『サイボーグ009 』の形の影が映るんです。

ほんとだ！影アートですね。

はい。でも、ほとんどの人は気づかないで通り過ぎていきます（笑）。

たしかに言われないと。隠れアートですね。

こういうのが館内にいくつかあって、わたしたちは隠れ展示と呼んでいます。で、ここからが石ノ森ワールドで、石ノ森先生の代表作を特撮と漫画とアニメに分けて映像で紹介しています。歴代仮面ライダーの変身シーンを上映してまして、もちろん電王も。

けっこうたくさんですよね。30ぐらい、もっとあるかな？

はい。仮面ライダーだけでも36作品あります。萬画館は石ノ森先生ご自身よりも、作品に焦点を合わせたミュージアムになっていまして、初めにサイボーグ009 の世界。その次が仮面ライダーの世界。

わ、1号。やっぱいつ見てもかっこいいっすね〜！

かっこいいですよね。

いつ見てもぞわっとする。すごい。いいデザインだよな、かっこいい。

今年ちょうど仮面ライダーが50周年なんですね。

あ、そうか。でも1号が一番いいんじゃないかな。子供ながらにこの頭のフォルムというか、この丸い感じがすごい好きでしたね。最初の頃のこの感じ、秀逸ですよね。

そうですよね。

ちなみに僕はアマゾンが一番好きでした。

アマゾン人気ありますよね。

アマゾン好きでしたね。まあ全部観てたんですけどね。ふつうに1号とかV3とかも観てたし。

1号とか年代的にはかなり古いですよね？

レンタルビデオ屋で借りて観てたんですよ。全部リアルタイムじゃないんです。アマゾンとかもビデオ屋で借りて観てましたね。

すごい好きなんですね。

はい。あぁ、ストロンガー懐かしい。

リアルタイムになるとどのあたりなんですか？

89年生まれだから、RXとか。でもリアルタイムだと逆にこういうのはテレビで観てなくて、親と一緒にレンタルビデオ屋に行って、昔の作品を観てたかな。RXとかBLACKとかもかっこいいですけど、やっぱ1号すごいな。1号のデザイン。1号すごいよ。これめっちゃかっこいいよ、やっぱり。

ここから平成ライダーになります。

クウガ、アギト。クウガも好きでした。

クウガで爆発的に人気になりました。

平成ライダー第1弾ですよね？

そうです。オダギリジョーさん。この頃から子供と一緒にお母様方も見るようになって。

そう考えるとクウガの功績は大きいですね。

あ、ちょうど電王のオープニング映像が。

あ、電王やってる？　おお、懐かしいね〜。

電王は15年くらい前になりますか？

そうですね、2007年ですね。

年月経っても言われますよね？

そうですね。いまだに映画やってますもんね、電王に関しては。

電王の人気はすごかったですよ。

キャラクターがいいから。

いや、下、入れないですもんね、ふつう。

そうですね、けっこう喜んでくださいますね。

うお〜。すげ。

まだ油の匂いとかしますよね。

します！すごい。雪かき用になってるんですか？

栗駒は雪深いので、スノープラウがついてますね。

電車って駅からしか見ないじゃないですか。

その角度から車輛見ることないですね。

ないですね。でっか！いや、かっこいいっす！

触ってみてもらっても大丈夫ですよ。

いいんすか!?いや〜、やっぱね、いい角度っすね〜。すごいわあ。うわ〜。いや、いいっすね。いいっすね〜。

では車輛の中に行きますか。

はい！

全長が12メートルしかないのでかなりコンパクトな車輛で。

これは1両運転なんですか？

基本的には2両編成で運転してましたね。さっきから音が聞こえると思うんですけど、運転シミュレーターがありまして。

すごっ！

うちの運転シミュレーターの特徴が、この通り実機にそのまま繫げて運転していただくというのがありまして。

すごいですね、貴重。

では、さっそく運転シミュレーターをやっていただきたいんですけど、いいですか？ぜひ座っていただいて。

すげー。

このシミュレーターは、途中でメダルをゲットしていくようになっていて、ゲーム性もありつつ、運転のうまさを測る感じです。

なるほど。

それによって、見習い、アマチュア、プロ、マスターとあるんですが、一番上がレジェンド級。

なるほど。

せめてプロくらいはできるとお見受けしています。

これだけ聞いていいですか？駅、何メートルですか？ホームに入ってから停車位置まで。

20メートルはあると思います。

了解です！

これでプロ以上を出してくだされば、プレゼントをご用意してますので。

まじっすか？

ぜひがんばってください。

がんばります。

当時の景色をかなり厳密に再現しています。

すごい、揺れがリアル。真っ直ぐいってないのがいいですね〜。

奥に黄色い矢印が見えますので、それが停止目標になります。

はい。

手前10メートルぐらいがセーフゾーンになりますので。

はい。

おっ！誤差0.00！1回目でゼロゼロを出した人初めて見ました。

あ、ほんとですか？

このあと鉄橋を渡ります。おおっ！

よしっ！よっしゃあ、全部とった〜メダル！

全部とったし2回とも0.00とかピッタシ。おめでとうございます！

やったあ、ありがとうございます。

このあと結果発表が出ますのでご覧ください。

はい。超緊張した。

よっしゃあレジェンド！

運転してる手つきがシミュレーターを運転してる手つきではなかったです。

ほんとですか!?

実機を運転してる手つきでした。

いやあ、嬉しいです。ゼロゼロ！

では、ミュージアムを出る際に、プレゼントを用意しておきますので。

やった！楽しみにしてます！

そうそう、市長に直訴。

なんてやったりして、けっきょく、いろいろあって自分たちでやろうとなったんですけど、440円の銭湯代で8000万〜1億円をペイするって絶対難しいじゃないですか。

そうですよね。

ということで何かアイデアが出ては頓挫し、また別のアイデアが出ては頓挫してっていう状態のときに、このトレーラーハウスのお風呂の中古があるって話を聞いて。

おおっ！

これ全部中古なんです。

そうなんですね。

お店も。

へえ〜。

それで中古だったらできるかなとなったものの、経営的に考えたとき、津波でみんな新しいお家だったり公営住宅に引っ越ししてお風呂がある人ばかりになったので、そうなるとほんとに漁師さん専門にやんなきゃいけないし、このカツオ船のみなさんは冬は来ないので、一年間のうち半分ぐらいは営業できないような感じでは経営的にも難しいしってことで、ならば、食堂のおばちゃんが番台がわりになって、「いいよ、はいどうぞ」みたいな係を兼任してもらえたらいいのかなあ、みたいな感じで。そこで湯上がりにビール飲めたら最高楽しいよねとかって言って。

めっちゃいいっすね。

漁師さんたちって、朝6時、7時とかから飲んでるんですよ。

そっかそっか、もうその時間から休憩。

うん、そうなんですね。水揚げは仕事の最後なので、それが終わったあと仕事あがりにお風呂入って、ビール飲んで、午後1時とか2時とかに出港するみたいな感じ。

あ、早いですね！もうちょっとゆっくり......。

そうなんです、よっぽど、台風とかじゃないと。

そうか〜。

わたしたちは、外から来ていただいた方々で今まで商売してきたんですね。そうやって生かしてもらってきたっていう文化なので、だからお風呂なんてほんと大したことないと思うんです。

いやいや。

船にもちっちゃいシャワーとかあるんです。でも船のお風呂は海水なので、やっぱり気仙沼の港に入ったら、真水のお湯に入浴剤とか入ったいい感じのお風呂に手足伸ばして入ってもらったら「ああ、気仙沼の港に入ってよかったな」って思われるかな〜っていう。

いや、素敵。

ただ、入ってよかったなって思ってもらいたいっていう感じですかね。

気仙沼の港に入ったら「ああ〜お帰りなさい、よく帰ってきてもらった」ってみんなが喜んでるっていう。

素敵です。

「よく来てけだねー（よく来てくれたね）」っていうものがじわじわと町の中から滲み出てるっていうような、そういう町になればいいよねって。

素敵〜。だってお風呂大事っすよね。手足伸ばせるか伸ばせないかで全然疲れのとれ方が違いますからね。僕もロケとかいろんなところに行かなくちゃいけなくて、海外とかだとシャワーだけみたいなところもあるんで、それで終わって家帰ってお湯ためると、「ああ、もぉ〜最高」って。

帰ってきたな〜っていう感じしますよね。

ね〜。

お風呂大事ですね。

わたしたち、震災にも遭ってるので、風呂ない暮らしがね、すごく長く続いたりして。震災後最初にシャワー浴びたり風呂入ったとき、泣けたよね。

1個しかない反射式ストーブの前に2リットルのペットボトルを置いておくんですよ。すると熱でお湯になる。10日ぶりかな、それでちょっとだけ入ったね。

当時、仕事で自分だけ都会に行って、自分だけお風呂に入ったっけさ。泣いだもん。なんかわるくて。地元はまだ風呂さ入れでないのに、わたしこの湯船に浸かっちゃったみたいな感じで。

わたしも、わたしも。

そのね、お風呂ってすごいよね。ニュースになったのね、震災後にさ、追い焚きがあっかないかっていう。それで、世の中の人から見たら「何言ってっけ、仮設で追い焚きがあるとかないとか言うなよ」って思ったと思うんだけど、追い焚きあるってすごい。寒いところだから、追い焚きがあってあったかいものに首まで入るっていうことも、安心感っていうかね、安らぐ感じっていうのは、わたしたちはそれは大事だなって余計思ってっかもね。

うん。

船の人たちって、板子一枚下地獄っていうぐらい危険ななかでやってくれてるから、それを全部気仙沼に水揚げしてくれて。そういう人たちが入りたい港にしたいっていうふうに最初言ってたし、みなさんこうやって水揚げ後に来て「ただいま」って言ってくれるので、すごくいい場所になってよかったなって思いますね。